測地測量,一般測量,あるいは天体観測に使用される光学器械の一種で,目標点の水平角および高度を測定するための装置。一般にトランシットtransitと呼ばれる。目標点を視準する小型望遠鏡を,鉛直,水平の2軸方式で目的の方向に向けることができ,その方向を水平目盛盤,鉛直目盛盤で読み取る構造になっている。望遠鏡を水平軸のまわりに自由にまわすことができるものをトランシット,下側でつかえるため望遠鏡が真上を向かないものをセオドライトtheodoliteと呼び分けていたこともあった。また,日本工業規格(JIS)では,角度目盛を読みとる方法が拡大鏡とバーニヤなどによるものをトランシット,測微計で光学的に拡大するものをセオドライトと区分している。しかし,一般にはこれらを区別しないことも多い。通常は三脚にのせて使用され,容易に持運びができる。運搬後の経緯儀は備付けの気泡水準管を利用して再び正しく設置が可能である。現在の精密経緯儀にはウイルド社のT3型,ケルン社のDKM3型などがあり,これらの器械では,光学的測微計によって角度の読取精度は0.1秒に達している。天体観測に使用する器械では,鉛直,水平の2軸によって望遠鏡を動かす型式のものをすべて経緯儀といい,これらの器械の中には角度の測定を目的としていないものも多い。
執筆者:長沢 工
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三脚などの上で望遠鏡を水平・上下方向に動かす装置を「経緯台」とよぶが、その構造を精密にし、望遠鏡の十字線を使って方向角を精密に測定する装置が経緯儀である。重要なのは、水平回転軸と上下回転軸の直交性、およびそれに取り付けられた目盛り環の精度などで、天文観測用の赤道儀などと異なり望遠鏡は脇役(わきやく)に回る。手軽に使用できるものは「トランシット」とも称し、広く測量に用いられている。天測用にとくに高い精度でつくられたものもあり、角度0.1秒まで測定する。近年はエンコーダーにより測角をデジタル表示できるようになっている。昔の測量は経緯儀による三角測量が中心だったが、近年は精密測距儀による三辺測量も行われるようになった。
[中嶋浩一]
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…エジプト時代の測量機器,方法については簡単な測量縄,測量幹の使用以外に詳細は不明であるが,ギーザのピラミッド(前2500ころ)の建築技術,その基礎の方向から,測量の精度はかなり良いものであったことがうかがわれる。 ギリシア時代には学問の進歩に伴い測量の分野でも発展がみられ,メトンMetōnによる方位の測定,エラトステネスによる地球外周長の測定があり,またヘロンによる経緯儀と水準器を組み合わせた測量器と考えられるディオプトラや歯車式の距離計についての記述,プトレマイオスによる天文観測用の象限儀(四分儀)についての記述が残っている。ローマ時代の測量手段はこれ以前のものと大きな差は見られないが,測量機器,方法の中部ヨーロッパへの普及が著しい。…
※「経緯儀」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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