家庭医学館 「水質汚染による健康障害」の解説
すいしつおせんによるけんこうしょうがい【水質汚染による健康障害】
1953年ごろから、熊本県水俣湾(みなまたわん)周辺で、四肢(しし)(手足)の知覚障害、運動失調、視野狭窄(しやきょうさく)、難聴などを症状とする中枢神経系(ちゅうすうしんけいけい)の病気がみられるようになり、水俣病(みなまたびょう)と呼ばれていました。
これは、工場が水俣湾に廃棄していた廃液中に含まれるメチル水銀をプランクトンが取り込み、そのプランクトンを魚が食べ、その魚を人間が食べ、という食物連鎖によっておこった有機水銀中毒であることが判明しました。
1964年ごろから新潟県の阿賀野川(あがのがわ)流域でも、同じ有機水銀中毒が報告されました。
1968年、どちらも工場の廃液中のメチル水銀が原因であることが認められ、公害病と認定されました。
一方、大正時代から、富山県神通川(じんつうがわ)流域で、全身の激しい痛みと骨折がおこる病気がみられ、イタイイタイ病と呼ばれていました。
1968年、イタイイタイ病の原因は、神通川上流にある鉱山から流出したカドミウムが米に蓄積し、この米を食べたためのカドミウム中毒と認められ、公害病と認定されました。
現在は、水質汚濁防止法で厳しい規制が行なわれていて、水質汚染による公害病はおこっていません。
●現在の水道水と問題点
日本の水道は、そのまま飲める安全な水として世界的にも有名です。これは、水道法で、厳しい水質基準が定められているからです。
しかし、近年、その水質に不安を抱かせる事態が出てきています。
1つは、水源の河川や湖沼(こしょう)が、生活排水、産業排水、水田・ゴルフ場などの農薬で汚染されていることです。
もう1つは、水道水を塩素で浄化する過程で発生するトリハロメタンの毒性です。トリハロメタンは、発がん性が疑われていて、含まれる量を監視し、基準を超えた場合は、給水を中止することになっていますが、活性炭によるトリハロメタンの除去や、オゾン消毒への変更が検討されています。