コトバンクはYahoo!辞書と技術提携しています。

沈黙交易 ちんもくこうえきsilent trade

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

沈黙交易
ちんもくこうえき
silent trade

言葉を一切用いることなく行われる交易の一形態。集団間で,一方の者が慣習的に定められた場所に物品を置き,一定の合図 (たとえば楽器などによる音声) を送って姿を消すと,合図を受けた他方の集団の者はその場所へ来て等価と考えられる物品を置いて引下がる。前者が再び現れて,満足すれば後者の置いた物品を持帰るが,満足しなければそのまま帰り,適当と考える物品が付加されるまで待つ。取引は,前者が後者の置いた物品を持去ることによって完了する。古くはカルタゴ人が,アフリカ人との黄金の取引に用いたというヘロドトスの記録がある。北アジア,ラップランド,西アフリカ,スマトラニューギニア,南アメリカのアマゾンなどの社会に広くみられる。

出典|ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について | 情報

世界大百科事典 第2版の解説

ちんもくこうえき【沈黙交易 silent trade】

取引をする双方が,姿も見せず言葉も用いることなく行う交易。無言交易ともいう。交易方法の原初的なものと考えられ,異種族間の交易方法として,その一風変わった形式から注目されてきた。ある決められた場所に品物を置き,合図をして姿をかくすと,取引相手があらわれて等価と思われる品物を,相手の品物の傍に置いて去る。取引の両者が相手の品物に満足すれば,相手の品物を持ち帰り,交易が成立する。このような形式の交換では,取引相手は必ず1対1(部族どうしあるいは共同体どうし)に限られ,交換レートをほかの尺度に置き換えて用いるような一種の貨幣の形成もあまりみられない。

出典|株式会社日立ソリューションズ・クリエイト世界大百科事典 第2版について | 情報

大辞林 第三版の解説

ちんもくこうえき【沈黙交易】

交換者同士の直接的なやり取りなしに成立する交易形態。交易相手が特定の場所にあらかじめ置いていった品物がほしい場合、自ら持参した等価の品物と引き換えに持ち去る。無言交易。

出典|三省堂大辞林 第三版について | 情報

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

沈黙交易
ちんもくこうえき

出典|小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について | 情報 凡例

世界大百科事典内の沈黙交易の言及

【交易】より

…このような交換回路には,海岸部と内陸部の種族間で海産品と山の産物が一定の時期に交換されたり,あるいはA→B→Cというように種族や集団が連鎖状に連結した交易関係を呈する事例などがある。こうした異種族間の交易の方式で著名なのが沈黙交易である。これは,交易を行う一方の側が慣習的に定められた一定の場所に自己に属する産品を置いて姿を消すと,やがて他方が来てこれを収受し,そこに代りの産品を置いておき,やがてこれを一方の側が収受するという交換の方式である。…

【交換】より

…財の交換の歴史的な起源は定かにはいいがたいが,たとえば前5世紀のヘロドトス《歴史》にカルタゴ人の商品とリビア人の黄金が双方の直接的接触,口頭での交渉なしに交換される様子が描かれている。このような交換はのちに〈沈黙交易〉として世界各地にその例が見いだされ,集団間の交換(交易)の原初的形態とも考えられてきた。個々の史実とは別に,そもそも交換の発端をどのようなものとみるかについては大きくわけて二つの立場がある。…

※「沈黙交易」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社日立ソリューションズ・クリエイト世界大百科事典 第2版について | 情報

沈黙交易の関連キーワード交易(物のやりとり)セマン族ベッダ族椀貸伝説交通クブ

今日のキーワード

存亡の機

引き続き存在するかここで滅びてしまうかという非常に重大な時。存亡の秋(とき)。...

続きを読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android