コトバンクはYahoo!辞書と技術提携しています。

法的安定性 ほうてきあんていせいRechtssicherheit

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

法的安定性
ほうてきあんていせい
Rechtssicherheit

法の支配ないしは法治主義法思想のもとにおける一種の法価値。法的安全,法的確実性ともいわれる。この言葉は法による安定性つまり法による社会秩序維持がもたらす社会生活安定という価値と,法の安定性つまり法それ自体の安定からもたらされる法価値という2つの意味に用いられる。前者後者を前提にして成り立ち,しかも平和ないしは秩序と同意義であるので,後者の法の安定性が固有の意味で法的安定性である。この安定性は次の要求を満たすことによって確保される。第1は法が実定法であること,第2はその法の解釈適用が客観的であること,第3はその法の実効性があること。法的安定性はまた法の目的でもあり,法が追求すべき正義衡平などの高次の諸目的を達成するために,まず実現すべき卑近な第1次的な目的とされている。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

デジタル大辞泉の解説

ほうてき‐あんていせい〔ハフテキ‐〕【法的安定性】

法律の制定改廃・適用が安定的に行われ、ある行為に伴ってどのような法的効果が発生するか予測可能な状態。
[補説]法秩序に対する人々の信頼を維持するための原則と考えられ、法の恣意的な運用や主観的な解釈などは避けなければならないとされる。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

世界大百科事典 第2版の解説

ほうてきあんていせい【法的安定性 legal certainty】

昼と夜,春夏秋冬の四季の循環が不規則に変化したりしたら,われわれの生活が成り立たなくなるように,法治国の国民の生活も,法や法の適用が不規則に変化すると,さまざまな不都合をこうむる。人々は法が安定して適用されることを期待して行動しているから,この期待を裏切らないようにしなければならない。法的安定性とは,法や法の適用を安定させ,人々の信頼を保護する原則である。そこから,(1)立法上の原則として朝令暮改を慎むこと,(2)法適用を安定させること,(3)当事者の信頼を保護すること,などの原則が生ずる。

出典 株式会社日立ソリューションズ・クリエイト世界大百科事典 第2版について 情報

知恵蔵miniの解説

法的安定性

憲法を頂点とする法の内容や適用を安定させることで人々の法に対する信頼を守る、法治国家基盤となる原則。法の内容や適用のむやみな変更を慎むことによる「法自体の安定」と、法により秩序が守られることでもたらされる「社会生活の安定」という二つの意味がある。

(2015-8-5)

出典 朝日新聞出版知恵蔵miniについて 情報

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

法的安定性
ほうてきあんていせい

法秩序が明確で安定して適用され、どのような行為にどのような法的効果が結び付くか予見可能な状態を法的安定性legal certaintyという。それには、法律が朝令暮改でないこと、法の解釈適用が一義的で、裁判官や役所の窓口によってさまざまな解釈が行われることのないこと、などが条件としてあげられる。しかし、法的安定性だけが強調されると、個別的事情や具体的妥当性が無視される事態を招きやすい。ここに法的安定性と具体的妥当性の矛盾という法運用の問題があり、法領域によってそのいずれに重点を置くかが異なる。たとえば、取引の安全を重視する商取引法などは法的安定性を重視するが、親族法などでは具体的妥当性のほうが重視される。ジェローム・フランクなどは法的安定性の信仰を神話にすぎないとして批判した。[長尾龍一]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

法的安定性の関連キーワードカロリーナ刑事法典連邦巡回控訴裁判所リアリズム法学ラートブルフ先発明主義長尾龍一論理解釈概念法学許可抗告先願主義国際私法外国判決本拠地法遡及効成文法悪法論憲法法源法典再審

今日のキーワード

天網恢恢疎にして漏らさず

《「老子」73章から》天の張る網は、広くて一見目が粗いようであるが、悪人を網の目から漏らすことはない。悪事を行えば必ず捕らえられ、天罰をこうむるということ。...

続きを読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android

法的安定性の関連情報