泥中の蓮(読み)デイチュウノハチス

デジタル大辞泉 「泥中の蓮」の意味・読み・例文・類語

でいちゅう‐の‐はちす【泥中の×蓮】

《「維摩経」から》汚れた環境の中でもそれに影響されずに、清らかさを保っていることのたとえ。

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精選版 日本国語大辞典 「泥中の蓮」の意味・読み・例文・類語

でいちゅう【泥中】 の 蓮(はちす)

  1. ( 「維摩経‐中」の「譬如高原陸地不蓮花、卑湿淤泥乃生此華。〈略〉煩悩泥中乃有衆生仏法耳」による。蓮が泥の中で清らかな花を開くところから ) 煩悩や俗世の汚れの中にあって染まらず、清浄を保っているもののたとえ。
    1. [初出の実例]「泥中(デイチウ)の蓮(ハチス)も汚れぬ花の栄へを見す」(出典:浄瑠璃・平仮名盛衰記(1739)一)

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故事成語を知る辞典 「泥中の蓮」の解説

泥中の蓮

俗世にあっても、清廉な人物のたとえ。また、けがれた環境の中でも美しさを保っているもののたとえ。

[使用例] 口奇麗な事はいいますともこのあたりの人に泥の中の蓮とやら、悪業わるさに染まらぬ女子があらば、繁昌どころか見に来る人もあるまじ[樋口一葉*にごりえ|1895]

[使用例] ガラス絵のよきものを探す興味は即ち泥中に蓮を求める興味でもあり酩酒店のガラス戸を覗いて見る感興でもある[小出楢重*ガラス絵雑考|1930]

[由来] 「維摩経―仏道ほん」に見える話から。病気で寝ている維摩を、もんじゅさつが見舞いに行ったときのこと。維摩居士は、「悟りの境地に達したにょらいになるには、何から始めるとよいですか」と質問しました。すると、文殊菩薩は「あらゆる煩悩が、如来になるための出発点となります」と答えます。さらにその意味を尋ねた維摩居士に対して、文殊菩薩は、「たとえば高原陸地にれんは生ぜず、湿しつでいすなわち此の華を生ずるがごとし(たとえて言えば、高い土地には美しい蓮の花は生えず、低い泥だらけの沼地の中にこそこの花が咲くようなものです)」と答えた、ということです。

[解説] ❶文殊菩薩が言っているのは、取り澄ました顔で生きている人よりも、煩悩にまみれて苦しんでいる人の方が、悟りへの道は近い、ということ。多くの凡人を救おうとする大乗仏教の考えが、よく現れています。❷故事成語としては、意味が転じて「けがれた世界でも清らかなもの」をたたえることばとして使われます。花といえば女性を連想しますが、男性に対して用いてもかまいません。

〔異形〕泥の中の蓮/蓮は淤泥より出でて染まらず/汚泥蓮華

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ことわざを知る辞典 「泥中の蓮」の解説

泥中の蓮

煩悩や俗世の汚れの中にあっても、これに染まらず清らかで美しい、また、清廉でいさぎのよい人物のたとえ。

[使用例] ガラス絵のよきものを探す興味はすなわち泥中に蓮を求める興味でもあり酩酒店のガラス戸を覗いて見る感興でもある[小出楢重*ガラス絵雑考|1930]

[解説] 蓮はきたない泥の中で清らかな花を開くところからいったもの。「維摩経―中」に見られることば。「泥水稼業」などの連想から女性に対する形容と思われがちですが、かつては男性に対しても用いられました。

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