土で造った小塔。仏典には塔を造り,修営することは功徳多いと説かれており,古来百万塔や八万四千塔などと称して多数の小塔が造られた。なかでも土をこね,または型(模)押しして小塔を造り焼成する泥塔は,安易に多数の塔を造れることから,日本のみならずインド,中国などひろく仏教圏の諸国において行われている。日本ではとくに密教の修法として寿命延長,もろもろの災厄を除くに功験ありとして〈泥塔供養作法〉があり,平安時代以降しばしば行われたことが記録に散見する。よくこねた泥土を型に入れて塔型を作り,開眼供養を行うもので,《造塔延命功徳経》や《無垢浄光大陀羅尼経》に依拠している。今日までの発見例としては,宝塔,五輪塔,多宝塔,層塔,円塔(饅頭形)など各種あり,塔に一字ずつの経文や梵字(種子(しゆうじ))をあらわしたものなどがある。京都市法勝寺址・六波羅蜜寺,奈良県宮古・箸尾など発見例は多い。
執筆者:木下 密運
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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