浮世節(読み)ウキヨブシ

デジタル大辞泉 「浮世節」の意味・読み・例文・類語

うきよ‐ぶし【浮世節】

寄席演芸の一。浄瑠璃長唄をはじめ流行歌俗曲などいろいろの音曲を取り合わせた三味線声曲。狭義には、明治中期立花家橘之助創始した流派をいう。

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精選版 日本国語大辞典 「浮世節」の意味・読み・例文・類語

うきよ‐ぶし【浮世節】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 当世流行の歌曲元祿一六八八‐一七〇四)頃の遊里や風俗などをとりあつかった流行歌の一種
    1. [初出の実例]「色道に首だけ沈み、そそりかけてのうき世ぶし」(出典:浮世草子・好色貝合(1687)上)
  3. 江戸時代から、主として寄席で歌われるもので、流行歌、俗曲など、種々の音曲を取り合わせた歌曲一般の称。
    1. [初出の実例]「よせと号し〈略〉咄しに音曲を入れ役者の声色物真似娘上るり八人芸浮世ぶしなど芸人を集て」(出典:随筆・寛天見聞記(1789‐1844))
  4. 明治二〇年頃の壮士演歌の一種。久田鬼石作の「浮世節」、鬼石学人作の「憂世武志」などがある。
  5. 明治中期に三遊派の女真打ち立花家橘之助によって創始され、寄席でうたわれた流行歌の一派。「大津絵」「とっちりとん」「ほこりたたき」などが代表曲。

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改訂新版 世界大百科事典 「浮世節」の意味・わかりやすい解説

浮世節 (うきよぶし)

邦楽種目。江戸時代より流行歌(はやりうた)の別名として使われた。明治の中期から大正にかけ,寄席で人気のあった女芸人,立花家橘之助(たちばなやきつのすけ)が,1900年(明治33)に浮世節家元として公認され,一流派を立てた。橘之助は《大津絵》《とっちりとん》などの俗曲に,長唄,常磐津清元節などを巧みに織り込み,陽気でおどけた歌詞と曲調に仕上げ,三味線の曲弾きを入れた《たぬき》といった曲で芸術性を高めた妙技をみせた。しかし橘之助没後,浮世節は中絶したが,第2次世界大戦後,西川たつ(1895-1959)が復活させ,1958年に芸術祭大衆芸能部門において芸術祭賞を受賞するなど劣らぬ芸をみせた。日本橋きみ栄(1915-93)らに継承されている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「浮世節」の意味・わかりやすい解説

浮世節
うきよぶし

俗曲の一種。流行唄(はやりうた)の異称として江戸時代に用いられた例もあるが、近年では立花家橘之助(たちばなやきつのすけ)(1868―1935)の音曲をさす。鑑札をもたなければ舞台へ出られなかった1886年(明治19)に関西から帰京した橘之助は、「三都音曲語り分け」として東京、京都、大阪の歌を「落語」の鑑札で演じていたところ、臨席した警官の指示で、警視庁へ「浮世節」の鑑札下付を願い出た。このときは却下されたが、1912年東京府知事に家元を認可され、ここに「浮世節」は公認の名称となった。その後は「どどいつ」「とっちりとん」をはじめ、各種流行唄の替え歌によって世相をうがった。1950年代に西川たつ(1895―1959)がこの名称を用いたこともある。

[倉田喜弘]

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百科事典マイペディア 「浮世節」の意味・わかりやすい解説

浮世節【うきよぶし】

明治以後,特に寄席(よせ)で歌われた流行歌,俗曲をさす。立花家橘之助が清元節などの邦楽の歌を採り入れて創始したが,現在は行われていない。また,江戸時代にははやり歌の意であったとも考えられる。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「浮世節」の意味・わかりやすい解説

浮世節
うきよぶし

寄席芸能の形態名。俗曲を集大成したもので,『大津絵節』『とっちりとん』をはじめ各種の音曲を,三味線を弾きながら演じるもの。明治,大正期の女性音曲師,立花家橘之助の創始。

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