海軍士官に主として高等兵学に関する学術を教授する海軍の最高学府。日本の旧海軍大学校は,1887年海軍大臣西郷従道が招いたイギリスの海軍大佐イングルスJohn Inglesの案を基礎とし,翌年8月東京築地旧海軍兵学校跡に創設された。初代校長は少将井上良馨(よしか)。当時は学生を甲号,乙号,丙号に区分し,主として海軍将校および機関官への教育を目的としたが,その後学制は変更を重ね,1926年には甲種,機関,選科の3種に区分し,36年特修学生が加えられた。各種学生の資格および修業年限は,甲種学生は少佐または大尉で2年,機関学生は機関大尉または機関中尉で2年,特修学生は甲種学生の教程を履修しない大佐または中佐で1年。選科学生は海軍士官で専門の学科(外国語,理工科,法制経済,教育学,兵学など)を専修するものをいい,修業年限は科目により違いがあって1~4年,また時局により短縮された。学生はいずれも試験と人物選考,特修学生は選考により毎年少数選抜され,卒業後は各部門の枢要な職に就き,海軍の施策,作戦用兵に大きな影響を与えた。施設は関東大震災(1923)により築地の校舎が焼失破損したため,1932年8月品川区上大崎長者丸の新校舎に移ったが,45年11月30日,海軍官制の廃止に伴って消滅した。なお,自衛隊においては海上自衛隊幹部学校がこれに相当する。
諸外国では,アメリカ海軍大学校U.S.Naval War College(1884創立)はニューポート(ロード・アイランド州)にあり,同国および自由主義圏各国の海軍士官の教育を実施している。イギリス海軍大学校Royal Naval College(1873創立)はグリニジに,ロシアの海軍アカデミーVoenno-Morskaya Akademiya(1877創立。革命後の1922年現名に改称)はサンクト・ペテルブルグに,フランス海軍大学校École de Guerre Navaleはパリに,イタリア海軍大学校はリボルノにある。
執筆者:市来 俊男
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旧日本海軍において海軍士官に高等の学術を教授することを目的とした機関。海軍教育刷新の一環として、1888年(明治21)東京・築地(つきじ)に設置され、学生は甲号、乙号、丙号の3種に分かたれた。その後、97年には学制の大改革が行われ、同校は将校および機関官に高等の学術を教授するところとされ、学生は甲種、乙種、機関科、選科の4種となった。さらに、1918年(大正7)には甲種、機関、選科、航海の4種となり、26年には航海学生が廃止となっている。また、23年には同校所管事項中に「高等学術の研究」が加えられ、32年(昭和7)には同校は品川区上大崎に移転した。海軍大学校は陸軍の陸軍大学校に相当し、その卒業者は海軍将校内のエリートとして海軍省や海軍軍令部の重要ポストを占め続けた。45年(昭和20)敗戦に伴い廃校。
[吉田 裕]
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