使用者と労働者との関係を、その利害が基本的に相対立する階級関係としてではなく、使用者の温情と従業員の忠誠心に基づく協調関係として説明し、労使関係の安定を図ろうとする労務管理の一方法。このため、使用者は従業員に対して企業内福利厚生策を実施するとともに、個人的な配慮を行う。この政策はロバート・オーエンのような開明的工場主に由来するものであるが、これが体系的に実施されるようになるのは、独占資本主義が確立してからである。この時代になると労働者の組織化が急速に進展し、その反抗が増大するとともに、大企業が独占利潤を獲得することによって、各種の福利厚生策を実施することができるようになった。日本においては、第一次世界大戦以降、使用者と労働者との関係が親と子との関係に当てはめられ、この種の労務管理政策が広く普及するようになった。しかし現在では、生産性の向上に協力し、その成果を共有するとするパートナーシップ思想が重要視されている。
[湯浅良雄]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
… こうして主君にたいする報恩(忠)と父母にたいする報恩(孝)の強調は,制度的には人倫の上下関係を秩序づけるとともに,家父長制と封建体制の安定化に貢献した。そして心理的には上位のものが下位のものに恩恵をほどこす半強制的な温情主義(パターナリズム)を生みだした。アメリカの文化人類学者R.ベネディクトは《菊と刀》のなかで,近世以降に発達をみた恩のあり方に注目し,人が全力をあげて背負わなければならない負担,債務,重荷であると分析した。…
…すなわち日本の家族には従来,(1)個人の生活より家の生活が優位性をもち,個人生活の盛衰が家の盛衰に代替される,(2)血縁関係を中心として構成員に上下のヒエラルヒーが設定される,(3)しかもそれは,上下の支配・服従の関係ではなく,親は喜んで子どもを庇護(ひご)し,子は進んで親の庇護を受けて協力するという,〈温かい〉というよりむしろ〈なま温かい〉人間関係が認められる。そしてこうした関係が企業の人事管理に色濃く反映されているのであり,〈温情主義〉ともいわれるのである。 戦後は,〈経営者は親であり,従業員は子どもである〉といった,イデオロギーとしての経営家族主義は確かに存在の基盤を失った。…
※「温情主義」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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