改訂新版 世界大百科事典 「測長器」の意味・わかりやすい解説
測長器 (そくちょうき)
length measuring machine
長さ計ともいう。長さ測定用機器には,ものさしに代表される線度器,ブロックゲージなどの端度器および拡大機構を有する長さ測定器がある。長さ計は,主として,ものさし,はさみ尺(例えばノギス),回転尺(回転部の周長で求めるもので,例えばタクシーメーター)などを指すことが多いが,なかには長さ測定用機器を総称することもある。拡大機構を有する長さ測定器には,それ自身の中に標準片をもっているマイクロメーターや測長器と,標準片をそれ自身の中にもたない指針測微器,ダイヤルゲージ,電気マイクロメーターなどとがあり,後者を比較測長器あるいはコンパレーターと呼んでいる。
測長器の標準片として,マイクロメーターねじ,標準尺,エンコーダーなどが用いられ,横型と縦型とがある。横型測長器は,ベッド,その上を移動する標準尺を内蔵している往復台,標準尺を観測する測微顕微鏡,被測定物を一定の測定力のもとにおく指示装置,および被測定物を支持する測定台とからなる(図1)。多くの測長器はこの形式をとっている。標準尺をベッド内に固定して,図2に示すように,往復台には標準尺検出用光学系をもった測長器もある。図1に示す測長器はアッベの原理を満足し,図2に示す測長器はエッペンシュタインの原理を満足する構造となっている。アッベの原理とは,ベッドの非真直性に基づく往復台の測定軸線からの角偏差による測定誤差を無視できるように,測定軸線と標準尺の目盛面とを同一直線上に配置することをいう。エッペンシュタインの原理は,ベッドの非真直性に基づく測定誤差を取り除くために,測定軸線と標準尺とが離れているときのその距離と標準尺用の対物レンズの焦点距離とを等しくなるように構成し,レンズの焦点面を標準尺上に光学的に配置することをいう。アッベの原理を満足した測長器では,被測定長の2倍以上の長さのベッドが必要である。そこで,長尺用測長器ではエッペンシュタインの原理を用いて,被測定物と標準尺とを並列に並べた構造とすることがある。横型測長器は小さいもので100mm,大きいものでは3mを超えて10mくらいの測定範囲のものが作られている。縦型測長器は標準尺が移動する形式で,測定範囲は100mm,100mmのブロックゲージを併用した200mmなどが広く用いられている。測定範囲が広いものでは,標準尺の代りに,鋼製ブランクに目盛線を刻んだガラス板を一定間隔ごとに組み込んだ基準棒,円筒の基準棒を並べたものを用いているものがある。標準尺の代りにエンコーダーを用いてディジタル表示をしている測長器も使用されている。マイクロメーターねじ使用の測長器の目量は1μm,2μmまたは10μm,標準尺使用のものでは測微顕微鏡によって目量1μmまたは0.5μmで,目量以下を目測で読み取る。ディジタル表示測長器の最小表示値は1μmまたは0.1μmである。
執筆者:沢辺 雅二
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報