源雅信(読み)みなもとのまさのぶ

朝日日本歴史人物事典 「源雅信」の解説

源雅信

没年正暦4.7.29(993.8.19)
生年延喜20(920)
平安中期の公卿鷹司,一条左大臣と称される。賜姓源氏宇多天皇の皇子敦実親王と左大臣藤原時平の娘の子。蔵人頭 を経て天暦5(951)年,参議。天元1(978)年左大臣に昇進したが,在職16年目に病死し,正一位を贈られた。その死を聞いた人々はみな恋慕したと『権記』にある。遺骸仁和寺(京都市右京区)に移された。長保1(999)年の忌日に娘倫子により7周忌の法事が仁和寺で営まれている(『御堂関白記』)。倫子は藤原道長(倫子より2歳年下)の妻となったが,当初,この結婚に雅信は反対であったという。『大鏡』によれば,「自分は親王たちの間で育ったため世間のことを知らないので朝延の政務や儀式のときには人より先に参内し,終わったあとも最後まで残って作法を見習った」と語っている。催馬楽をよく口ずさみ,和琴,箏,笙をよくし,「音楽堪能,一代の名匠」とうたわれた。

(朧谷寿)

出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「源雅信」の意味・わかりやすい解説

源雅信
みなもとのまさのぶ

[生]延喜20(920)
[没]正暦4(993)
平安時代中期の廷臣,楽人。宇多天皇の孫。敦実親王の子。源朝臣の姓を受けて臣籍に入る。侍従,蔵人頭,参議などを経て,貞元2 (977) 年右大臣,翌年左大臣となった。和歌蹴鞠 (けまり) に長じていたが,とりわけ音楽にすぐれ,一代の名匠とほめたたえられた。催馬楽 (さいばら) と朗詠の基礎づくりに貢献し,特に左大臣を辞するとき,その辞表のなかで佳句を朗詠し,その句や歌い方がのちの朗詠の模範となったと伝えられる。父敦実親王とともに雅楽の歌物の流儀の一つである源家の祖とされる。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

山川 日本史小辞典 改訂新版 「源雅信」の解説

源雅信
みなもとのまさのぶ

920~993.7.29

一条左大臣とも。平安中期の公卿。宇多天皇皇子の敦実(あつみ)親王の三男。母は左大臣藤原時平の女。951年(天暦5)参議。時に従四位上。近江権守・治部卿・左兵衛督などを兼ね,970年(天禄元)1月権中納言,8月中納言,972年大納言。977年(貞元2)右大臣。翌年左大臣。987年(永延元)従一位。993年(正暦4)病により出家し死去。正一位追贈。女の倫子(りんし)は藤原道長に嫁し,頼通・教通・彰子らを生む。

出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報

デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「源雅信」の解説

源雅信 みなもとの-まさのぶ

920-993 平安時代中期の公卿(くぎょう)。
延喜(えんぎ)20年生まれ。敦実(あつみ)親王の王子。母は藤原時平の娘。宇多源氏の祖。天暦(てんりゃく)5年(951)参議。貞元(じょうげん)3年左大臣となり,従一位にいたる。一条左大臣,鷹司殿とよばれた。名臣の評があり,管弦,催馬楽(さいばら)をよくした。正暦(しょうりゃく)4年7月29日死去。74歳。贈正一位。

出典 講談社デジタル版 日本人名大辞典+Plusについて 情報 | 凡例

世界大百科事典(旧版)内の源雅信の言及

【宇多源氏】より

…敦実親王の系統が最も栄えた。親王の子源雅信(920‐993)は左大臣として朝廷に重きをなし,弟重信(922‐995)も左大臣に昇ったが,ともに父敦実親王の才能をうけて音楽の道に秀でていた。雅信の兄の寛朝(かんちよう),弟雅慶(がけい)はともに東寺長者,法務,大僧正となり,真言密教の重鎮として活躍した。…

【朗詠】より

催馬楽(さいばら)に比べると拍節も定かではなく,むしろ,ゆるやかに流れるフシのみやびやかさを鑑賞すべく考案されたもののようである。宇多天皇の孫にあたる源雅信(920‐993)がそのうたいぶりのスタイルを定め,一派を確立したと伝えられており,その後,雅信を流祖とする源家(げんけ)と,《和漢朗詠集》《新撰朗詠集》の撰者藤原公任,藤原基俊などの流派である藤家(とうけ)の2流により,それぞれのうたいぶりや譜本を伝えた。これらの流儀はさらにうたいものを伝える堂上公家の系統である綾小路(あやのこうじ)家持明院家などに受け継がれ,これらの家に伝わる譜本に基づいて1876年に《嘉辰》《春過》《徳是(とくはこれ)》《東岸》《池冷(いけすずし)》《暁梁王》《紅葉(こうよう)》の7曲が,さらに88年に《二星(じせい)》《新豊》《松根》《九夏》《一声》《泰山》《花十苑》の7曲が宮内庁楽部の選定曲とされ,別に《十方(じつぽう)》を加えて,現在の宮内庁楽部のレパートリーとされている。…

※「源雅信」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

仕事納

〘 名詞 〙 年の暮れに、その年の仕事を終えること。また、その日。《 季語・冬 》[初出の実例]「けふは大晦日(つごもり)一年中の仕事納(オサ)め」(出典:浄瑠璃・新版歌祭文(お染久松)(1780)油...

仕事納の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android