乾式リン酸肥料の一つ。本来はリン鉱石に添加剤を加え溶融処理して製造する肥料塩の総称である。溶成苦土リン肥,レヒリングリン肥,脱フツ溶融リン酸三石灰,メタリン酸石灰などの種類が,工業化あるいは研究された。出発物質の形態は異なるが,トーマスリン肥も広義の溶成リン肥といえる。日本で現在生産されているのは溶成苦土リン肥だけなので,一般にはこれを溶成リン肥(溶リン)と呼ぶ。ブラジル,韓国,南アフリカでも生産される。基礎研究,生産技術は日本が最も進んでいる。リン鉱石にケイ酸マグネシウム質資材(蛇紋岩,フェロニッケル合金スラグなど)を混合したものを,電気炉または平炉で1400~1500℃程度に溶融し,流出時に水流急冷を行ったのち,乾燥,粉砕して製品とする。水には不溶で,クエン酸液には可溶性のガラス質粉末である。糖みつなどの粘結剤を加えて造粒した製品もつくられる。組成からみるとCaO-MgO-P2O5-SiO2系ガラスであり,リンはオルトリン酸根PO43⁻の形で含まれている。肥料公定規格ではク(枸)溶性P2O517%を保証する。リンのほかカルシウム,マグネシウム,ケイ酸を含み,有効4成分からなる塩基性肥料として,ユニークな存在である。しかも無硫酸根であって,土壌改質材としても優良である。原料にホウ酸塩,マンガン鉱石を少量ずつ加えて製造されるBM溶リンもある。これはホウ素,マンガンの各微量要素を併せ含有した溶成リン肥で,微量要素肥料の役目をもなしている。
→リン酸肥料
執筆者:金澤 孝文
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リン鉱石の硫酸分解によらず,添加剤を加えて加熱融解して可溶性にした,中性あるいは塩基性リン酸肥料の総称.これらは,
(1)硫酸分がなく pH 9程度,
(2)土中の酸化物と結合しにくいため,肥効に永続性がある,
(3)吸湿性がない,
(4)塩基性であり,
酸性土壌改良に適する,などの特徴がある.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
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