六訂版 家庭医学大全科 「漢方の診断法」の解説
漢方の基礎知識
漢方の診断法
(健康生活の基礎知識)
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漢方では、人の体を健康に保っている体内のバランスを、「気・血・水」という要素に分けてとらえています。
「
漢方ではそのような状態を「
「
「血」の循環が異常を来し、停滞したり偏在したりした状態を「
「
「水」が停滞した状態を「
この3つは当然のことながらお互い持ちつ持たれつの関係にあるので、どれかに異常を来すとほかも影響を受け、体内バランスが崩れます。そしてまず「未病」の状態になり、放っておくといずれ発病します。したがって、何となく体の具合がよくないといった時に漢方医にかかるか、あとでお話しする「相談薬局」を訪れるとよいでしょう。
この「気・血・水」の変調と、次に解説する「
●「
西洋医学では基本的に病気を個々の臓器や器官、組織の異常としてとらえます。診断は、患者さんの状態を見、話を聞いたり体に触れたりして、それらの異常を推定します。そして必要があればそれを確認するために検査をし、その異常を数値化したり画像化したりして「病名」を決めます。
一方、漢方では病気の原因=きっかけを個々の組織の異常ではなく、体内バランスの乱れと考えます。そして「病名」ではなく「
「証」というのは、診察した時点での患者さんの多角的な状態を表す用語で、症状や異常の内容と程度、体型、「
「証」は患者さん固有の状態で、次のような要素により影響を受けます。
・証に影響する要素……年齢、性別、基礎体力、体質、生活環境、生活習慣、食習慣、性習慣、
判定される「証」には、
漢方ではこの「証」を治める、元にもどすために、それぞれの「証」に合った漢方薬の処方を組み合わせることで治療します。したがって同じ症状でも「証」の内容が違えば、処方の組み合わせはまったく違ってきます。また逆に、まったく違う症状でも、体内バランスの乱れである「証」が同じであれば、同じ処方となることもあります。
もし「証」に合わない処方を服用した場合、いつまで経ってもよくならないばかりか、逆に副作用が出る場合もあります。漢方薬を服用し始めて2カ月ほど経っても変化がない場合、処方の組み直しが必要になる可能性があるので、処方医か調剤した薬剤師に相談しましょう。
また「証」は日々、変化します。なぜなら、生活習慣や環境要素などにより体の状態が変化しますし、また、漢方薬が効いてくると「証」も変化(改善)するからです。したがって基本的に、漢方では同じ処方は短期間(数日から数週間)しか出しません。
そこで、漢方医による診察時、あるいは薬剤師との相談時の重要なポイントは、前記の「証」に影響を及ぼす要素について、ご本人のありとあらゆる情報を包み隠さず、忘れることなく伝えることです。逆にそれらについて、こと細かに聞かれても正直に答えなければ、誤った「証」の診断が下されることになります。
そのため漢方医による診察、あるいは漢方薬局における相談は、とても時間がかかる(長い場合2~3時間)のです。
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「証」を多角的に判定するには、診察あるいは相談が必要になるわけですが、その手段には「四診」と呼ばれる方法が用いられます。それには文字通り4つの方法があり、おのおの「
「望診」:体格や体型、皮膚、舌、挙動や目つきなどを観察します。
「聞診」:声や呼吸音、咳の音、おなかの音、それに体臭や口臭など臭いを観察します。
「問診」:全身的な自覚症状や慢性的な症状、「証に影響する要素」を詳しく聞きます。
「切診」:体に触れますが、さらに「
「脈診」は脈の速さや強さなどを診ます。
「腹診」はおなかの上から指で押さえて内臓の状態を診ます。
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報