火中の栗を拾う(読み)かちゅうのくりをひろう

故事成語を知る辞典「火中の栗を拾う」の解説

火中の栗を拾う

自分の利益にならないのに、危険をおかすことのたとえ。また、危険を承知で、あえて問題の処理や責任ある立場を引き受けることのたとえ。

[使用例] 日本が列強のめに、みずから手を火中に投して、栗を拾い上げたるは、智なりとせん、愚なりとせん乎[徳富蘇峰*世界の変局|1915]

[使用例] 易者にいわせれば、高田の手相は、典型的な野心家のもので、自ら好んで火中の栗を拾う性格だそうです[西村京太郎*寝台特急殺人事件|1978]

[由来] 一七世紀のフランスの詩人、ラ・フォンテーヌの「寓話」によって知られる、「猿と猫」という話から。昔々、ある家に、猿と猫が暮らしていました。あるとき、家の主人が暖炉で栗を焼いているのを見て、それを食べたくなった猿が、猫にこんなふうに持ちかけました。「君はああいうのを取るのがうまいから、ひとつ、その腕前を見せてくれよ」。おだてられた猫は、手をやけどしそうになりながらも、栗を一つ一つ取り出していきます。ところが、その一方で、その栗を猿が一つずつ食べてしまっていた、ということです。

[解説] ❶のおだてに乗せられてしまった猫が、ちょっとかわいそうなエピソード。そのため、うまく言いくるめられて、他人のために危険をおかす場合に使うのが、本来の使い方。自分から進んで危険をおかす場合に使うのは、あとから生まれた用法です。❷古代ギリシャの「イソップ寓話」の一つに、同じ話があるともされています。しかし、実際にこの話の存在が確認できるのは、一七世紀が最古だとのことです。

〔フランス〕tirer les marrons du feu.

〔英語〕pull a person's chestnuts out of the fire.

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精選版 日本国語大辞典「火中の栗を拾う」の解説

かちゅう【火中】 の 栗(くり)を拾(ひろ)

(猿が、猫をおだてて、いろりのなかのクリを拾わせて、猫が大やけどをしたという、ラ=フォンテーヌの寓話から) 他人の利益のために非常な危険をおかすことのたとえ。

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ことわざを知る辞典「火中の栗を拾う」の解説

火中の栗を拾う

自分の利益にならないのに、危険をおかすことのたとえ。また、危険を承知で、あえて問題の処理や責任ある立場を引き受けることのたとえ。

[使用例] 昔の加藤清正のように、敵対勢力のために、悲壮な心で、火中に栗を拾わねばならぬ破目とは違い[中里介山*大菩薩峠|1913~41]

[解説] ヨーロッパに伝わる「猿と猫」の寓話に基づく表現で、日本には明治後期に入ったものと思われます。猿が猫をそそのかして暖炉から栗を取り出させ、まんまと独り占めする話で、イソップ寓話集の一部やこれに材をとったラ・フォンテーヌの寓話に収録されています。なお、日本では、旧制中学の英語教科書のイソップ物語として最初に知られました。

〔フランス〕tirer les marrons du feu.

〔英語〕pull a person's chestnuts out of the fire.

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デジタル大辞泉「火中の栗を拾う」の解説

火中(かちゅう)の栗(くり)を拾う

《猿におだてられた猫が、いろりの中の栗を拾って大やけどをしたという、ラ‐フォンテーヌの寓話(ぐうわ)から》自分の利益にならないのに、他人のために危険を冒すたとえ。

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