炭疽病(読み)タンソビョウ(英語表記)anthracnose

デジタル大辞泉 「炭疽病」の意味・読み・例文・類語

たんそ‐びょう【炭×疽病】

炭疽

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精選版 日本国語大辞典 「炭疽病」の意味・読み・例文・類語

たんそ‐びょう‥ビャウ【炭疽病】

  1. 〘 名詞 〙 柿、梅、桃、みかんなどの果樹や豆、瓜などの作物に発生する病害。子嚢菌や不完全菌によって起こる。果面、茎、葉に褐色の斑点を生じ、ついには果実は腐敗落果し、茎、葉は枯死落葉するもの。炭疽。

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改訂新版 世界大百科事典 「炭疽病」の意味・わかりやすい解説

炭疽病 (たんそびょう)
anthracnose

不完全菌類Colletotrichum属菌,Gloeosporium属菌の寄生によって起こる植物の病害。炭疽病菌の中には有性世代の知られているものもある(例えばGlomerella)。植物の葉,茎,果実などに発生して鮮明な病斑を作り,しばしば黒っぽく凹んだ壊疽(えそ)を作ることから病名が与えられた。病斑が古くなると,黒い凹部にサーモンピンクの粘塊を生ずる。これは本菌の分生子で,飛散して第2次伝染源となる。また分生子あるいは病斑部に潜む菌糸は夏を越し,また越冬して翌年の発生源となる。これは第1次伝染源である。子囊胞子を形成するものもあるが病気の拡大に大きな役割をもつのは分生子である。よく知られたものに,スイカ,インゲン,タマネギ,カキ,ブドウなどの炭疽病がある。ブドウの炭疽病は晩腐(おそぐされ)/(ばんぷ)病と呼ばれる。これらの植物ではとくに果実,鱗茎の被害が大きい。オーチャードグラス炭疽病は葉に褐色の斑点を多量に作り,被害が大きい。炭疽病の発生が多いときには,有機硫黄剤を散布すると防除効果がある。なお,ヒトや家畜がかかる同名の病気については〈炭疽〉の項目を参照されたい。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「炭疽病」の意味・わかりやすい解説

炭疽病
たんそびょう
anthracnose

穀類、豆類、野菜、果樹、樹木など有用植物の葉、枝、果実、種子などに発生する病気。葉では淡褐色ないし黒褐色の類円形の病斑(びょうはん)を、果実など多肉の部分では褐色から暗褐色のへこんだ円形の病斑をつくり、のちに病斑の表面に桃色ないし鮭肉色(けいにくしょく)の特徴のある粘質物(分生胞子の塊)を生ずる。病原は不完全菌類に属するコレトトリクムColletotrichum、またはこれらの完全時代であるグロメレラGlomerella属の糸状菌(カビ)で、日本では70種近くの種が知られている。代表的なものは、コムギトウモロコシおよびイネ科牧草の炭疽病(C. graminicolaによる)、インゲンマメ、ササゲの炭疽病(C. lindemuthianumによる)、キュウリ、スイカなどのウリ類の炭疽病(C. orbiculareによる)、柑橘(かんきつ)類、シュンギクキンセンカ、ラン類(カトレアデンドロビウム)の炭疽病(C. gloeosporioidesによる)、イチゴおよびベゴニア、コスモス、アネモネなど花類の炭疽病(C. acutatumによる)、リンゴ、ナシ、カキ、ピーマン、シンビジウムの炭疽病(Glomerella cingulataによる)などがある。病植物を除去するほか、有機銅剤、TPN剤、トリアジン剤、ベノミル剤、マンゼブ剤などの殺菌剤を散布して防除する。

[梶原敏宏]

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百科事典マイペディア 「炭疽病」の意味・わかりやすい解説

炭疽病【たんそびょう】

植物の葉,茎,果実に発生する病気。葉では丸い病斑を生じ,果実ではくぼみを生じて暗黒色を示し,桃色の粘状物を生ずることが多い。病原菌は不完全菌類や子嚢(しのう)菌類でアズキ,タバコ,トマト,ハクサイ,バラ,スイートピーなど多くの植物にこの病気が知られている。病植物の除去や種子消毒,ボルドー液やジネブ剤などの散布により防除する。家畜法定伝染病は炭疽
→関連項目貯蔵病害

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飼料作物病害図鑑 「炭疽病」の解説

炭疽病(ソルガム・スーダングラス)

世界的な重要病害。日本では発生は少ないとされてきたが、近年気候温暖化に伴い発生が増加している。盛夏に小さな円形の斑点を葉に形成する。これが徐々に拡大して、周縁部赤褐色〜紫色、中央部黄褐色〜灰白色の病斑となり、相互に融合して不定形病斑となる。病斑が古くなると剛毛という菌組織が形成され、中央部が黒くかびてくる。剛毛付近には粘塊状の胞子が形成され、これが風雨で飛散してまん延する。病原菌はトウモロコシ、オーチャードグラス、ライグラスなどの炭疽病菌と同属だが、種が異なり、ソルガムにのみ病原性を示す。

炭疽病(ライグラス)

暖地での夏枯の原因となる斑点性の糸状菌病。初め水浸状の小斑点が現れ、これが広がって灰白色〜淡褐色、長楕円形〜紡錘形、長さ5-10mm、幅2ー4mm程度の病斑になる。病斑が古くなると中央部に剛毛という菌組織を形成し、黒くかびたように見える。多湿条件下ではオレンジ色の胞子粘塊を形成し、これが風雨で飛散してまん延する。梅雨明けから夏の終わりにかけて発生する。病原菌はソルガム、オーチャードグラス、バヒアグラスなどの炭そ病菌と同種であるが、それぞれ寄生性が分化しているとされる。

炭疽病(フェスク)

暖地での夏枯の原因となる斑点性の糸状菌病。初め水浸状の小斑点が現れ、これが広がって灰白色〜淡褐色、長楕円形〜紡錘形、長さ5-10mm、幅2ー4mm程度の病斑になる。病斑が古くなると中央部に剛毛という菌組織を形成し、黒くかびたように見える。多湿条件下ではオレンジ色の胞子粘塊を形成し、これが風雨で飛散してまん延する。梅雨明けから夏の終わりにかけて発生する。病原菌はソルガム、オーチャードグラス、バヒアグラスなどの炭そ病菌と同種であるが、それぞれ寄生性が分化しているとされる。

炭疽病(レッドトップ)

暖地での夏枯の原因となる斑点性の糸状菌病。初め水浸状の小斑点が現れ、これが広がって淡赤褐色〜橙色、楕円形〜紡錘形、長さ5-10mm、幅2ー4mm 程度の病斑になる。病斑が古くなると中央部に剛毛という菌組織を形成し、黒くかびたように見える。多湿条件下ではオレンジ色の胞子粘塊を形成し、これが風 雨で飛散してまん延する。梅雨明けから夏の終わりにかけて発生する。病原菌はソルガム、ライグラス、バヒアグラスなどの炭疽病菌と同種であるが、それぞれ 寄生性が分化しているとされる。

炭疽病(オーチャードグラス)

暖地での夏枯の原因となる斑点性の糸状菌病。初め水浸状の小斑点が現れ、これが広がって淡赤褐色〜橙色、楕円形〜紡錘形、長さ5-10mm、幅2ー4mm程度の病斑になる。病斑が古くなると中央部に剛毛という菌組織を形成し、黒くかびたように見える。多湿条件下ではオレンジ色の胞子粘塊を形成し、これが風雨で飛散してまん延する。梅雨明けから夏の終わりにかけて発生する。病原菌はソルガム、ライグラス、バヒアグラスなどの炭そ病菌と同種であるが、それぞれ寄生性が分化しているとされる。

炭疽病(トウモロコシ)

梅雨明けから発生する斑点性の糸状菌病。病斑は周縁部黒褐色、中央部黄褐色〜灰白色、楕円形で、後に相互に融合して不定形となる。病斑が古くなると剛毛という菌組織が形成され、中央部が黒くかびてくるのが特徴。剛毛付近にはオレンジ色の粘塊状の胞子が形成され、これが風雨で飛散してまん延する。病原菌はソルガム、オーチャードグラス、ライグラスなどの菌と同種だが、それぞれ寄生性が分化しており、他の植物の菌がトウモロコシを侵すことはないとされる。

炭疽病(エンバク)

梅雨明けから発生する斑点性の糸状菌病。病斑は黄褐色〜橙色、楕円形、大きさ5-30×1-5mmで、後に相互に融合して不定形となる。病斑が古くなると中央部が灰白色になり、そこに剛毛という菌組織が形成され、黒くかびてみえる。剛毛付近にはオレンジ色の粘塊状の胞子が形成され、これが風雨で飛散してまん延する。病原菌はソルガム、オーチャードグラス、ライグラスなどの菌と同種だが、それぞれ寄生性が分化しているとされる。

炭疽病(ベルベットグラス)

梅雨明けから発生する斑点性の糸状菌病。病斑は黄褐色〜橙色、楕円形で、後に相互に融合して不定形となる。病斑が古くなると中央部が灰白色になり、そこに 剛毛という菌組織が形成され、黒くかびてみえる。剛毛付近にはオレンジ色の粘塊状の胞子が形成され、これが風雨で飛散してまん延する。病原菌はソルガム、 オーチャードグラス、ライグラスなどの菌と同種だが、それぞれ寄生性が分化しているとされる。

炭疽病(センチピードグラス)

葉に斑点を形成する糸状菌病で、2004年に報告された新病害。病斑は灰褐色、周縁部は褐色〜赤褐色、紡錘形〜不整形、長さ3-5mm、幅1-2mm。病 斑が古くなると中央部に剛毛という菌組織を形成し、黒くかびたように見える。多湿条件下では胞子粘塊を形成し、これが風雨で飛散してまん延する。梅雨期か ら夏の終わりにかけて発生する。病原菌はノシバ炭疽病と同種である。

炭疽病(パスパルム)

暖地で発生の多い葉枯性の糸状菌病。病斑は橙色から灰褐色、楕円形から紡錘形、長さ5mm程度で、古くなると中央部に剛毛を形成し、黒くかびて見える。病 斑周囲は激しく黄化し、病勢が進展すると病斑が融合して葉枯症状となる。病原菌は他のイネ科植物の炭そ病菌と同種だが、寄生性が異なるとされる。

炭疽病(アカクローバ)

夏から秋に発生する、暖地で被害の大きい糸状菌病。葉、葉柄、茎に発生し、黄褐色、紡錘形、少しくぼみ、中央部に黒いかび(剛毛)を生じた病斑となる。病斑部から上は萎れてしまうことが多く、激発時には株枯となる。病原菌はアルファルファにも寄生する。

炭疽病(サブタレニアンクローバ)

夏から秋に発生する、暖地で被害の大きい糸状菌病。葉、葉柄、茎に発生し、黄褐色、紡錘形、少しくぼみ、中央部に黒いかび(剛毛)を生じた病斑となる。病斑部から上は萎れてしまうことが多く、激発時には株枯となる。病原菌はアルファルファにも寄生する。

炭疽病(アルファルファ)

夏から秋に発生する、暖地で被害の大きい糸状菌病。葉、葉柄、茎に発生し、黄褐色、紡錘形、少しくぼみ、中央部に黒いかび(剛毛)を生じた病斑となる。病斑部から上は萎れてしまうことが多く、激発時には株枯となる。病原菌はクローバにも寄生する。

炭疽病(ノシバ)

1999年7月栃木県内で発生。葉身に中央部灰色、周縁部褐色となる紡錘形の病斑を生じ、葉身先端部が侵され易い。古い病斑上に多数の黒点(分生子層)を生じる。

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