日本大百科全書(ニッポニカ) 「シンビジウム」の意味・わかりやすい解説
シンビジウム
しんびじうむ
[学] Cymbidium
ラン科(APG分類:ラン科)シンビジウム(シュンラン)属の総称。約70種を含み、熱帯アジアを中心に、北は日本、中国、ヒマラヤ山麓(さんろく)、インドからオーストラリアまで広く分布する。園芸的には、温帯産のカンランやシュンランなどを東洋ランとして区別する場合がある。今日では両者の交雑種も多く栽培されている。
常緑性の多年草で、卵形の偽球茎に線形の葉を10枚ほどつけ、茎部から花茎を伸ばし、1~30個の花をつける。交雑品種は多く、大形から小形まであり、色彩は紅紫、桃、緑、黄、白色など豊富である。小形から中形までの品種は耐寒性が強く、5~6℃で越冬する。大形品種は10℃は必要である。
繁殖は株分けにより、一般に春に行い、2~3球ずつに分け、ミズゴケやオスマンダの場合は素焼鉢に、砂利やバークの場合は堅鉢に植える。鉢は新しい偽球茎が1~2年伸びられるほどの大きさのものを用い、鉢の高さの3分の1程度まで鉢片など粗い材料を入れ、根を広げ、よく排水するように植える。植え付け後10日くらいは日陰で、暖かい場所に置き、葉水を与える。夜温が10℃を保つようになったら戸外の通風のよい場所に出し、夏季は50%の日よけをする。秋には屋内へ入れる。肥料は油かすと骨粉を等量混ぜ、茶さじ1~2杯を月1回、秋まで置肥する。灌水(かんすい)は春から秋は十分にするが、冬季は乾いたら灌水する程度とする。花期は普通春から秋であるが、つぼみ付きの株を夜間は10~17℃くらいの乾きすぎない場所で管理すれば、冬から早春に花を開かせることができる。
[唐澤耕司 2019年5月21日]