点字図書館(読み)テンジトショカン

日本大百科全書(ニッポニカ) 「点字図書館」の意味・わかりやすい解説

点字図書館
てんじとしょかん

点字資料、視覚障害者等用の録音資料(音声デイジー〔DAISY:Digital Accessible Information System〕図書等)などを製作、提供する施設。視聴覚障害者情報提供施設として身体障害者福祉法第34条に位置づけられ、地方公共団体、社会福祉法人等が設置する。視覚障害者およびその他の障害により視覚による表現の認識が困難な者(視覚障害者等)が、無料または低額な料金で利用できる。

 日本では、明治時代から点字図書の閲覧や貸出しは一部で行われていたが、蔵書数は200~300冊程度の小規模なものであった。1935年(昭和10)に岩橋武夫(1898―1954)が設立したライトハウス会館(現、日本ライトハウス情報文化センター)、および1940年に本間一夫(1915―2003)が設立した日本盲人図書館(現、日本点字図書館)が、日本を代表する点字図書館としてよく知られている。ともに、社会福祉法人が経営する私立の点字図書館である。

 草創期の点字図書館の蔵書規模は、点字資料の出版が少なく、小規模とならざるをえない状況にあった。これらの改善に貢献したのが、点訳奉仕活動(点訳ボランティアの活動)の普及と、公費による点字資料の製作や貸出しの民間委託事業の開始(1955)であった。加えて、1957年(昭和32)には、厚生省(現、厚生労働省)が点字図書館設置基準暫定案を策定し、点字図書館の育成に乗り出した。これにより、全国各地に点字図書館が設立されるようになった。厚生省による補助対象となる点字図書館数は、1956年にはわずか10館であったが、1965年に26館、1975年に63館、1990年(平成2)に74館と増加していった。2024年(令和6)時点では76館となっている。

 点字資料とは別に、カセットテープレコーダーの普及により録音資料(テープ図書)に対するニーズも高まった。厚生省は1979年から日本点字図書館と日本ライトハウスに対し、録音資料の製作と貸出しの事業を委託し、全国の点字図書館にテープライブラリーが設けられるようになった。録音資料の製作に不可欠なのが音訳奉仕者(音訳ボランティア)の存在である。1990年代以降は、テープ図書から、デジタル録音の音声デイジー図書に、徐々に移行していった。音声デイジー図書は、コンパクトディスク(CD)などのパッケージでの提供はもちろんのこと、点字図書館の全国組織である全国視覚障害者情報提供施設協会が運営するインターネットサービス「サピエ図書館」を通してデータでも提供されている。

 点字資料や録音資料は、地域の公立図書館でも製作、提供するところがある(障害者サービス)。視覚障害者等の多様な読書と情報へのニーズに応えていくためには、点字図書館のいっそうの充実とともに、点字図書館と公立図書館の連携強化が欠かせない。このことは、2019年(令和1)6月に施行された視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する法律(読書バリアフリー法)にも示されている。

[野口武悟 2026年2月13日]

『世界盲人百科事典編集委員会編『世界盲人百科事典』(2004・日本図書流通センター)』『本間一夫著『指と耳で読む――日本点字図書館と私』(岩波新書)』

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改訂新版 世界大百科事典 「点字図書館」の意味・わかりやすい解説

点字図書館 (てんじとしょかん)

視覚障害者を対象とする読書サービス機関。一般図書館が図書館法により教育行政のもとにあるのに対し,点字図書館は身体障害者福祉法による更生援護施設であり,その経営・業務内容は大きく異なる。現在日本には大小約90の点字図書館(公立約70)があるが,そのうち最も規模の大きい東京の日本点字図書館は1940年全盲の本間一夫が自己の蔵書を元に創立した民間の社会福祉施設であり,点字図書9万8000冊,2万3500点,録音図書34万1600巻,2万点(2005現在)を所蔵している。一般図書館が購入図書の館内閲覧を主業務とするのに対し,おもな点字図書館は点字出版所を兼ねるとともに,点訳・朗読奉仕者を養成して点字・録音図書を作製し,読者への館外郵送貸出しを行う。近年は録音図書利用の伸びがめざましく,日本点字図書館の2005年度年間貸出数は点字4万6500冊に対し,録音図書34万1800巻に達している。1954年から点字図書,61年から録音図書作製費として国庫補助が開始されて以来,公費委託作製の図書が全国公私立点字図書館に配布されるようになったが,今なお年間作製図書の大半は点訳・朗読奉仕者の善意によるものであり,財政的にも募金に依存する現状である。

 イギリスでは,全国盲人図書館National Library for the Blind(略称NLB)と学生図書館,録音図書館を経営するイギリス盲人協会(RNLB)の二つの民間施設がおのおの機能を分担し,国や地方当局の財政援助も受けて効果的なサービスを行っている。これに対しアメリカでは国会図書館が各地域図書館と緊密な協力のもとに,全国の盲人その他活字書利用困難な身体障害者に対し,連邦予算をもって点字・録音図書の作製および点字図書,録音テープ,トーキングブックならびに録音再生装置の貸出しを行っている。このほか,失明学生・研究者のための専門図書館など民間団体による特色ある図書館サービスも発達している。
点字
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

図書館情報学用語辞典 第5版 「点字図書館」の解説

点字図書館

視覚障害者の求める情報や知識を提供できるように,点訳,音訳のためのボランティアの養成や,点字資料や録音資料の製作,貸出などを行う図書館.日本では,日本点字図書館や社会福祉法人日本ライトハウス情報文化センターを含む101館が全国視覚障害者情報提供施設協会(全視情協)(前 全国点字図書館協議会)に加盟している(2018年現在).1990年代半ば以降,全国点字図書館協議会・全視情協を中心に点字図書館ネットワークシステム「てんやく広場」,「ないーぶネット」による点字資料とその書誌情報の提供が行われ,2010(平成22)年からは日本点字図書館と全視情協を中心に視覚障害者情報総合システム「サピエ」が運用されている.点字や音声DAISYデータのインターネット提供を通じて,視覚障害者への情報提供サービスは向上しつつある.

出典 図書館情報学用語辞典 第4版図書館情報学用語辞典 第5版について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「点字図書館」の意味・わかりやすい解説

点字図書館
てんじとしょかん
library for the blind

盲人のための点字刊行物や録音図書を収集,閲覧させる施設。イギリスの盲人アーノルドが 1882年に点字図書の貸出しを行なったのが最初といわれる。日本では 1924年,鹿児島県立図書館が盲人閲覧室を開設したのが最初。 40年には盲人本間一夫が東京に日本点字図書館を設立。 49年に公布された身体障害者福祉法 (昭和 24年法律 283号) は,更生援護施設の一種として点字図書館と点字出版施設を定め,54年に初めて点字図書製作費を予算に計上,日本点字図書館にその実施を委託した。

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