無響室(読み)ムキョウシツ(その他表記)anechoic room

デジタル大辞泉 「無響室」の意味・読み・例文・類語

むきょう‐しつ〔ムキヤウ‐〕【無響室】

音の反響が無視できるほど小さい特別の部屋。壁・床・天井に音を吸収する素材を内張りして、残響音を取り除いている。スピーカーマイクロホン音響測定聴力精密検査機械が発する動作音の測定などに用いられる。→残響室

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「無響室」の意味・わかりやすい解説

無響室
むきょうしつ
anechoic room

音の測定に用いるために、室内での音の反響を無視できるほど小さく設計した特別の室。スピーカーやマイクロホンなどの音響測定、産業機械から発生する騒音の測定、人間の聴力の精密測定、音の立体感覚の測定など、多くの目的に使用され、音の測定の基本的施設として重要である。

 一般の室では、音源から直接放射された音のほかに、床や天井を含む壁面反射される多くの成分を含む。そのため、内部の音の分布状態が非常に複雑になり、音の測定には向かない。無響室は、床や天井を含む壁面を吸音力の大きな材料で覆うことにより音の反射をなくし、有限のスペースでありながら音響的には無限の広さをもった空間と等価な状態をつくるものである。理想的な無響室では、音源から放射された音は放射方向に伝わるだけで、反射してくる成分を含むことはない。このような音の状態を自由音場(おんじょう)とよぶ。壁面に使用する吸音材としてもっともよく使われるのはガラス繊維である。太さ10マイクロメートル前後のガラス繊維を綿状にしたものは、音をよく吸収する性質がある。これを楔(くさび)型に成形すると、微量の反射があっても室内に戻ってこないようにすることができる。無響室では、室外からの音や振動が入ってこないようにする必要もある。このため吸音壁の外側の外壁は十分の厚さをもった剛壁とし、また必要に応じて吸音壁を含めた内部を防振ゴムなどを用いて浮かせるなどのくふうがとられる。無響室は容積が大きければ大きいほど、自由音場として使える空間が広くなるので、事情が許す限り大きいことが望ましい。

[吉川昭吉郎]

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改訂新版 世界大百科事典 「無響室」の意味・わかりやすい解説

無響室 (むきょうしつ)
anechoic room

音響実験室の一つ。周囲の壁面での音の反射をほとんどなくして,室内の響きがまったくないように作られた室をいう。室内の響きをできるだけ長くした残響室と対比される。

 床,天井,壁の吸音材料として,一般には,ガラス繊維材などの多孔質吸音材料をくさび形に成形した材料が数多く使われている。その寸法は縦横20cm程度,長さ1m前後で,壁から数十cmの空気層を設けて設置してある。低い音から高い音まで一様に99%以上も吸音するが,くさびの長さと空気層の厚さが大きいほど,より低い音まで吸音する。室内には人が歩けるように,ピアノ線で作った網状の床などが設備してある。

 壁からの反射がないので,室内では直接音だけが存在するため,点音源の場合の音の強さは距離の2乗に逆比例して小さくなる。このような音場を自由音場といい,マイクロホンやスピーカーなど音響機器の性能測定に使用したり,人間の聴覚や物体に音が当たったときの反射や吸音のぐあいを調べるのに用いる。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「無響室」の意味・わかりやすい解説

無響室
むきょうしつ
anechoic room

音響実験に用いる部屋。外部からの雑音を遮断するため周囲を厚さ 20~30cmのコンクリート壁で造り,内部で実験に使う音源から発した音波が壁で反射して干渉を起さないように,壁面に吸音材を張りつけ完全吸収に近い状態にしてある。床も浮かして音源による床の振動も吸収させる。音源のスペクトルや指向性の測定に欠くことのできない実験室である。

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百科事典マイペディア 「無響室」の意味・わかりやすい解説

無響室【むきょうしつ】

マイクロホンの周波数特性など音響機器の性態測定や物体の音の反射,吸音特性を調べるのに用いられる音響実験室。室外の音響や振動を完全に遮断(しゃだん)するとともに,床・天井・壁を厚い吸音体でおおい,室内の反響が生じないようにしてある。

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