片身替(読み)かたみがわり

精選版 日本国語大辞典 「片身替」の意味・読み・例文・類語

かたみ‐がわり‥がはり【片身替】

  1. 〘 名詞 〙 直垂(ひたたれ)素襖(すおう)肩衣袴(かたぎぬばかま)小袖など、衣類背縫い中心左右地質染織文様の異なった仕立てをしたもの。大身替(おおみが)わり。
    1. 片身替り〈東京国立博物館蔵〉
      片身替り〈東京国立博物館蔵〉
    2. [初出の実例]「うへは、地はうすうすとあか紫に、濃き紫、あききかうしとを、かたみかはりにをられたるを」(出典:とはずがたり(14C前)四)
    3. 「本間左衛門太郎義景、地白紫の片身易(カタミガハリ)の直垂に金銀の薄(はく)にて十六目結(ゆい)を押し」(出典太平記(14C後)四〇)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「片身替」の意味・わかりやすい解説

片身替
かたみがわり

衣装の半身を異なった裂(きれ)で仕立てたものをいう。この意匠起源は、貴重な裂を新たに購入することのできない庶民が、安価な染物を手持ちの裂に継ぎ足したり、あるいは使い古した衣装のまだ使える部分を切り取り、これに、他の染め裂を張り合わせるなどした庶民の生活の所産であろうか。鎌倉時代の絵巻に、この種の衣装をまとった下級武士の姿が描かれている。しかし、桃山時代から江戸時代初期にかけてこの意匠は流行し、この時代には能装束傑作をみるにとどまらず、陶器蒔絵(まきえ)にも応用された。器物の片身をはでな色に、他方を渋い色の釉(うわぐすり)にかき分けた織部の施釉(せゆう)法や、片身を黒漆地、他方を梨地(なしじ)にした高台寺(こうだいじ)風の蒔絵がその代表である。

村元雄]

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