牛鬼(読み)ウシオニ

デジタル大辞泉 「牛鬼」の意味・読み・例文・類語

うし‐おに【牛鬼】

牛の形をした妖怪。また、地獄獄卒である牛頭ごず
愛媛県宇和島市の秋祭りに出る真っ赤で長大な牛の作りもの。また、それをまねて作った玩具。

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精選版 日本国語大辞典 「牛鬼」の意味・読み・例文・類語

うし‐おに【牛鬼】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 牛の形をした妖怪。主として、地獄の獄卒である牛頭(ごず)や、牛の頭を持った怪物などのこと。
    1. [初出の実例]「いきすだま。〈略〉うしおに。いかり。名よりも見るはおそろし」(出典:枕草子(10C終)一五三)
  3. 島根県で海の妖怪をいう。和歌山県西牟婁郡、高知県土佐郡などでは川の淵に住む妖怪をいう。
    1. [初出の実例]「牛鬼といふもの、出雲の国にてといふ所に有。〈略〉雨降りつづき湿気など深き時は、夜此橋の辺りにて牛鬼に逢ふ也」(出典随筆・異説まちまち(1748)四)
  4. 愛媛県宇和島地方の、多く秋の祭礼に出る霊獣の大きな練り物。長い首の上に牛のような角を生やした鬼の頭を据え、長さ五、六メートルの胴体に剣をかたどった尾がついている。ウショウニン、ブーヤレなどともいわれる。

牛鬼の語誌

( 1 )「大智度論‐一六」、「往生要集‐上」等に見える地獄の獄卒「牛頭(ごず)」からきたものか。「牛頭」の姿形頭部は牛、胴体は人形であり、古典作品に現われる「牛鬼」もこれに準じると思われる。
( 2 )平安朝末の「今昔‐一七」には「牛の頭(かしら)なる鬼」が登場する。一方、日本各地に見られる地方伝説中の「牛鬼」は、頭部が二本または一本角の鬼、胴体が牛形になっている。


ぎゅう‐きギウ‥【牛鬼】

  1. 〘 名詞 〙 牛の形をした怪物。うしおに。
    1. [初出の実例]「昔、此所より牛鬼が出で駆けまはりけりといふ」(出典:仮名草子・東海道名所記(1659‐61頃)一)
    2. [その他の文献]〔杜牧‐李賀詩序〕

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普及版 字通 「牛鬼」の読み・字形・画数・意味

【牛鬼】ぎゆう(ぎう)き

牛頭の怪物。唐・杜牧〔李賀集の序〕鯨(げいきょ)鼇(がうてき)、牛鬼蛇も、其の幻(たんげん)爲(た)るに足らず。蓋(けだ)し騷の裔(べうえい)(遠孫)なり。

字通「牛」の項目を見る

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「牛鬼」の意味・わかりやすい解説

牛鬼
うしおに

南伊予(みなみいよ)の祭礼に出る練り物の一種。ウショウニンともブーヤレともいわれ、多くは秋の祭礼に愛媛県宇和地方の名物として、怪奇ないでたちで街を練り歩いている。長い首の上に牛のような角を生やした鬼の頭を据え、割り竹で編んだ長さ5、6メートルの胴体に、剣をかたどった尾がついている。全身をシュロの毛か赤布で覆い、数十人の若者に担がれて練る。後ろから子供たちが竹法螺(たけぼら)をブーブー鳴らしながら行く。悪魔払いに、戸ごとに頭首をにょきにょき動かして突っ込むが、日ごろ評判の悪い家では乱暴することもある。由来は、文禄(ぶんろく)の役(えき)(1592)に加藤清正が使用したともいわれるが、行列先払い獅子(しし)などと同系のものである。

[萩原秀三郎]


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世界大百科事典(旧版)内の牛鬼の言及

【カモシカ】より

…古くは角が薬用として,また毛皮は修験者などのしり当てとして需要が多かった。人口の多い西日本では,早くから奥地山岳に退いてその数もまれで人の目にふれる機会が乏しかったので,農民からは牛に似た怪物として牛鬼の名で恐れられた土地が多い。四国西部では,この姿をまねたとも考えられる厄払いの芸能として牛鬼を出し物とする祭儀がある。…

※「牛鬼」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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