精選版 日本国語大辞典 「牛」の意味・読み・例文・類語
うし【牛】
〘名〙
① 偶蹄目ウシ科の家畜。原種はヨーロッパからアフリカに生息していたオーロックスとされる。頭部に断面が円形の角二本をもち、からだは肥え、脚は比較的短く、体高一・二~一・五メートルほど。皮膚に黒、白、褐色などの短毛が密生し、尾は細くて長く先に毛総がある。上顎(うわあご)には前歯がなく、胃は四つに分れていて、一度のみこんだものを、もう一度口へもどしてかみなおす。機敏ではないが、力が強く、古くから有用な家畜として運搬、耕作などに使われ、肉や乳は食用に、皮、角などもいろいろの面に使われている。和牛のほか、ホルスタイン、ジャージーなど品種が多い。
※古事記(712)上「牛を放ち、馬を息(いこ)へ」
② ①の肉。牛肉。
※安愚楽鍋(1871‐72)〈仮名垣魯文〉二「往くも復へるも流行の、牛肉(ウシ)で杯一(ぱいいち)ぱくつく腹組(はらぐみ)」
③ (水牛の角で作るところから) 「はりかた(張形)」の異称。
※雑俳・柳多留‐一四(1779)「うしはものかわとかげまへつぼねいひ」
④ (「ぎゅう(妓夫・牛)」の「牛」を訓読みにして) 遊女屋の客引き男。
⑤ 江戸時代、伊豆国(静岡県)下田で遊女をいう。〔随筆・北里見聞録(1817)〕
⑥ 金銭を賭けてする楊弓(ようきゅう)や大弓(だいきゅう)で百をいう。
※随筆・一時随筆(1683)「かけものは〈略〉銭のときは一銭を餓鬼、二銭を地といひ〈略〉百を牛とす」
⑦ =うしのした(牛舌)
※雑俳・住吉みやげ(1708)「三疋の牛をさいふに入てきた」
⑧ 竹や木を家の棟木のように組んで立てたもの。ものを立てかける台にする。
※随筆・松屋筆記(1818‐45頃)八四「牛と云ものを土俵または石などに押へ」
⑨ 「うしばり(牛梁)」の略。
※随筆・南畝莠言(1817)上「蔵の横木を牛といへるは、汗レ牛充レ棟などいへることよりあやまり来りしならむ」
⑩ 水の流れをおさえるために河川に設ける構築物。棟木形の木組みを石などで固定させる。
※延宝八年合類節用集(1680)「牮 ウシ セン」
[補注]古くは他の語と複合すると多く「うじ」となる。「子うじ」「雄うじ」「雌うじ」「あめうじ」など。
ぎゅう ギウ【牛】
[1] 〘名〙
① うし。〔日葡辞書(1603‐04)〕〔易経‐説卦〕
② 牛肉。
※安愚楽鍋(1871‐72)〈仮名垣魯文〉初「もしあなたヱ、牛(ギウ)は至極高味(かうみ)でごすネ」
③ (「ぎゅう(妓夫)」のあて字) ⇒ぎゅう(妓夫)
※浄瑠璃・嫗山姥(1712頃)一「空に紫の雲気(うんき)たな引斗(と)牛(ぎう)の間に英々(ゑいゑい)たり」 〔晉書‐張華伝〕
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