元本部分が、物価の動きに連動して増減する国債。物価が上昇すれば償還時の元本ばかりでなく、利子も増える。国債は通常、インフレ時に資産価値が物価上昇分だけ目減りするが、物価連動国債はこのリスクがない。イギリスが1981年に初めて発行し、その後、カナダ、アメリカ、フランス、ドイツなどに広がった。日本は2004年(平成16)3月に初めて発行したが、2008年のリーマン・ショックにより、海外投資家の資金引揚げの動きが広がったため、同年10月に発行を中断。その後、安倍晋三(あべしんぞう)政権が目ざすデフレ脱却をにらんで、2013年10月から発行を再開した。なお物価連動国債の利回りを普通国債と比較すると、市場の物価予測を示す「期待物価上昇率」(ブレーク・イーブン・インフレ率:BEI率)を算出できる。
日本の物価連動国債は、元本が消費者物価指数(生鮮食品を除く)に連動する仕組みで、満期は10年。たとえば満期までに消費者物価が20%上昇した場合、償還額が元本より2割増える。利子は、発行時の利率(固定金利)で半年ごとに受け取る。購入できるのは銀行や保険会社などの機関投資家だけであるが、財務省は2017年2月から個人向け物価連動国債の発行を計画している。物価連動国債には、物価が持続的に下落するデフレ時に元本割れするタイプと、利率を低く抑えて元本を保証するタイプの2種類がある。財務省は2004年の発行時には元本保証していなかったが、2013年度の再開時には元本保証するタイプに切り替えた。
海外では2年債から50年債まで多様な年限の物価連動国債がある。発行残高もイギリスで3125億ポンド(2013年6月時点)、アメリカで9364億ドル(同年9月末時点)、フランスで1686億ユーロ(同年8月末時点)であり、国債発行残高に占める物価連動国債の割合は8~23%に達している。日本では10年債のみ発行されており、2016年3月末時点で発行残高は6兆7000億円、国債全体に占める発行割合は1%未満である。財務省は物価連動国債や、元本と金利部分を分離できる「ストリップス債」の発行などで国債の種類を増やし、大量発行している国債の安定消化を目ざしている。
[矢野 武 2016年10月19日]
(熊井泰明 証券アナリスト / 2008年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報
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