物価連動国債(読み)ブッカレンドウコクサイ(英語表記)inflation linked bonds

デジタル大辞泉 「物価連動国債」の意味・読み・例文・類語

ぶっかれんどう‐こくさい【物価連動国債】

元金額が物価動向に連動して増減する利付国債表面利率発行時に固定されるが、利子は各利払い時の想定元金額に表面利率を乗じた額が支払われるため増減する。償還期間は10年。
[補説]譲渡先は一定条件を満たす法人に限られ、個人では保有できない。平成20年(2008)8月以降、発行されていなかったが、平成25年(2013)10月から発行が再開された。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「物価連動国債」の意味・わかりやすい解説

物価連動国債
ぶっかれんどうこくさい
inflation linked bonds

元本部分が、物価の動きに連動して増減する国債。物価が上昇すれば償還時の元本ばかりでなく、利子も増える。国債は通常、インフレ時に資産価値が物価上昇分だけ目減りするが、物価連動国債はこのリスクがない。イギリスが1981年に初めて発行し、その後、カナダ、アメリカ、フランス、ドイツなどに広がった。日本は2004年(平成16)3月に初めて発行したが、2008年のリーマン・ショックにより、海外投資家の資金引揚げの動きが広がったため、同年10月に発行を中断。その後、安倍晋三(あべしんぞう)政権が目ざすデフレ脱却をにらんで、2013年10月から発行を再開した。なお物価連動国債の利回り普通国債と比較すると、市場の物価予測を示す「期待物価上昇率」(ブレークイーブンインフレ率BEI率)を算出できる。

 日本の物価連動国債は、元本が消費者物価指数生鮮食品を除く)に連動する仕組みで、満期は10年。たとえば満期までに消費者物価が20%上昇した場合、償還額が元本より2割増える。利子は、発行時の利率(固定金利)で半年ごとに受け取る。購入できるのは銀行や保険会社などの機関投資家だけであるが、財務省は2017年2月から個人向け物価連動国債の発行を計画している。物価連動国債には、物価が持続的に下落するデフレ時に元本割れするタイプと、利率を低く抑えて元本を保証するタイプの2種類がある。財務省は2004年の発行時には元本保証していなかったが、2013年度の再開時には元本保証するタイプに切り替えた。

 海外では2年債から50年債まで多様な年限の物価連動国債がある。発行残高もイギリスで3125億ポンド(2013年6月時点)、アメリカで9364億ドル(同年9月末時点)、フランスで1686億ユーロ(同年8月末時点)であり、国債発行残高に占める物価連動国債の割合は8~23%に達している。日本では10年債のみ発行されており、2016年3月末時点で発行残高は6兆7000億円、国債全体に占める発行割合は1%未満である。財務省は物価連動国債や、元本と金利部分を分離できる「ストリップス債」の発行などで国債の種類を増やし、大量発行している国債の安定消化を目ざしている。

[矢野 武 2016年10月19日]

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知恵蔵 「物価連動国債」の解説

物価連動国債

元本の償還額が償還日の物価に連動する国債。物価の基準としては全国消費者物価指数が用いられる。利率は一定であるため、インフレ時には元本及び利払い額が目減りするリスクが避けられるが、物価が下落した場合には償還額も減少する。譲渡制限があり、購入者は国内外の機関投資家などに限られている。個人では購入できないため、個人向けにはこの国債を組み込んだ投資信託商品が販売されている。英国では1981年、米国では97年に販売が開始され、いずれも短期間で大きく発行残高が増えている。日本では2004年3月から発行されているが、譲渡制限、デフレ時の償還差損のリスク、特殊な会計処理の必要性などが忌避され、07年度の発行予定額は3兆円で、全体の2%強。

(熊井泰明 証券アナリスト / 2008年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

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