自動車の種類の一つで、形態、構造、用途などが通常と異なり、特殊なものをいう。日本の道路交通法第1章総則の第3条(自動車の種類)では、「自動車は、内閣府令で定める車体の大きさ及び構造並びに原動機の大きさを基準として、大型自動車、普通自動車、大型特殊自動車、自動二輪車(側車付きのものを含む。以下同じ。)及び小型特殊自動車に区分する。」と規定して、それぞれ運転には大型特殊自動車免許と小型特殊自動車免許を要求している。
同法の施行規則(昭和35年総理府令60号)第1章総則第2条(自動車の種類)は大型特殊自動車を次のように規定している。「カタピラを有する自動車(内閣総理大臣が指定するものを除く。)、ロード・ローラ、タイヤ・ローラ、ロード・スタビライザ、タイヤ・ドーザ、グレーダ、スクレーパ、ショベル・ローダ、ダンパ、モータ・スイーパ、ホーク・リフト、ホイール・クレーン、ストラドル・キャリヤ、アスファルト・フィニッシャ、ホイール・ハンマ、農耕作業用自動車及び内閣総理大臣が指定する特殊な構造を有する自動車で、小型特殊車以外のもの。」
小型特殊自動車も種類としては共通であるが、大きさが長さ4.7メートル以下、幅1.7メートル以下、高さ2メートル以下で、かつ毎時15キロメートルを超える速度を出すことのできない構造のもの(内燃機関を原動機とする自動車ではその総排気量が1.5リットル以下のものに限る)となっている。
登録、整備関係、統計などにかかわる道路運送車両法の施行規則(昭和26年運輸省令74号)でもほぼ同じ車種をあげているが「土木作業用牽引(けんいん)自動車、ポール・トレーラ、並びに国土交通大臣の指定する特殊な構造を有する自動車」を追加している。
自動車の本来の使命は人員、物資などの輸送であるが、その輸送でも運ぶ物資の形態や輸送方法などが特殊であれば、おのずから自動車の形態、構造も特殊になってくる。たとえば大型コンテナを腹の下につり下げて荷役に活躍するストラドルキャリヤー、工場などで荷物の積み下ろしや短距離輸送に働くフォークリフトなどがそれである。一方、自動車を移動する工作台と考えてさまざまな機械を搭載すれば、必要な所へ自走していって作業を行う作業用車となる。ホイールクレーンやホイールハンマーはその例である。さらに走るという機能に直接作業能力を結び付けたものとしてロードローラーやタイヤドーザー、スクレーパーなどの建設機械がある。
これらの特殊自動車は通常われわれの目に触れる機会は少ないが、あらゆる分野で活躍し、われわれの生活と社会を支えている。
[高島鎮雄]
広義には,乗用車,バス,トラック,二輪自動車(オートバイ)以外の,特殊な用途のために作られた自動車のこと。道路運送車両法や道路交通法では,キャタピラを有する自動車や,フォークリフト,ロードローラー,グレーダー,ショベルローダーなどの特別な構造をもつ自動車ないし自走可能な建設・農耕作業用車両などを特殊自動車としており,このほか道路運送車両法では土木作業用牽引自動車,ポールトレーラーならびに運輸大臣の指定する特殊な構造を有する自動車を,また道路交通法では総理大臣が指定する特殊な構造を有する自動車を特殊自動車に含めている。
さらに両法とも,長さ4.7m以下,幅1.7m以下,高さ2m以下のもののうち,最高速度15km/h以下のものを小型特殊自動車,それ以外を大型特殊自動車と2種に分類している。またJISでは,これとは別に特別用途車(特用車),特別装備車(特装車),特殊車に分類している。特別用途車は,特別の目的のために車体を特殊なものとしたもの,または特殊な器具を取り付けてある自動車としており,これには宣伝車,救急車,郵便車,冷蔵車がある。特別装備車は,自動車に特別の機械を取り付け,それを自動車の原動機で駆動するようになっているもので(積載した別の原動機で駆動する場合も含む),これにはタンク車,ダンプカー,ミキサー車,衛生車,消防自動車,レッカー車の6種が含まれる。特殊車は,特殊構造の自動車,または自走のできる特殊作業用機械とされ,16種が定められているが,これらの多くは土木・建設・農耕用などの単能機械ともいうべきもので,自走機能はもつものの最高速度は25km/h以下のことが多く,短距離の移動を除いては大型トラックやトレーラーにより運搬される。道路運送車両法に規定されるのは,一般路上での作業や短距離の路上走行を考慮してのことであり,作業場内のみで使われる場合には自動車としての登録を受けないで使われることもある。
→建設機械
執筆者:中谷 弘能
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