自動車,原動機付自転車,軽車両の道路運送車両に関する所有権の公証制度と,安全性の確保のための保安基準,整備,検査,自動車整備事業等について定める法律(1951公布)。所有権の公証のための制度として自動車の登録制度を設け,登録を第三者に対する所有権の得喪の対抗要件としている(4条,5条)。保安基準に関しては自動車の構造,装置,定員,最大積載量等に関して詳細な技術基準が運輸省令で定められており,それに適合しない車両は運行の用に供することが禁止されている。整備に関しては自動車の運行者,使用者に仕業点検,定期点検整備が義務づけられ,車両の検査(いわゆる車検)に関しては,新規検査,継続検査,臨時検査等が定められ,新規検査に合格した車両については自動車検査証が交付される。自動車検査証の有効期間は車両の種類によって異なる。継続検査は自動車検査証の有効期間満了後も当該車両を継続して使用しようとする場合のものである。1983年の臨時行政調査会第5次答申に基づいて,車両検査の簡素化の議論が強力になされたが,法改正の際には自動車整備業界の反対にあって政治的な妥協がなされ,大幅な簡素化は実現しなかった(1983改正)。しかし,その後も国内からの規制緩和要求と,日米自動車・部品協議等において自動車部品の市場開放を重要な政策課題とするアメリカ政府の要求とがあいまって,1995年に,自動車ユーザーの保守管理責任の明確化,日常点検整備の導入および定期点検整備の簡素化等を柱とする,いわゆるユーザー車検を認める大幅な規制緩和が実現した。
自動車分解整備事業を営もうとする者は,事業の種類および事業場ごとに陸運局長の認証を得なければならず,認証を得ずに自動車分解整備事業をなす者には罰金が課せられる。また,認定工場中で一定の基準を満たすものを指定工場として認定する制度があり,そこで車両検査がなされたものについては,陸運事務所に現車を提示する必要がなく,事実上,国の車両検査の代行がなされている。
執筆者:来生 新
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
道路上を運行する自動車、原動機付自転車、軽車両に関し、所有権についての公証を行い、安全性の確保および公害の防止ならびに整備についての技術の向上を図り、あわせて自動車の整備事業の健全な発達を通じて公共の福祉を増進することを目的とする法律。昭和26年法律第185号。
おもな内容は次のとおりである。
(1)所有権の公証のための登録、自動車登録番号標(自動車ナンバー)、臨時運行の許可など自動車の登録の規定。
(2)安全性を確保し、公害を防止するための製作と使用に関する保安上および公害防止上の技術基準。
(3)保安基準に適合するように維持するための定期点検整備、整備管理者の選任など自主的整備の規定。
(4)国が行う車両検査の方法、自動車検査証の有効期間などに関する事項。
(5)軽自動車の検査業務を行う軽自動車検査協会の設置および管理、運営に関する事項。
(6)自動車の運行の安全性の確保および公害の防止と密接な関連をもつ自動車分解整備事業の認証、優良自動車整備事業者の認定、指定自動車整備事業(民間車検場)の指定など自動車の整備事業に関する規定。
1995年(平成7)施行の改正法で車検制度の簡素化が行われ、その後、リサイクル促進、リコール制度の強化や不正改造の禁止等に関する改正がされている。2019年(令和1)5月公布、2020年4月施行の法改正で、自動運転車の普及を想定し自動ブレーキ(衝突被害軽減ブレーキ)システムの新車搭載などが義務化された。
[天野和治・土居靖範 2020年7月21日]
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