狂人日記(読み)キョウジンニッキ(英語表記)Zapiski sumasshedshego

デジタル大辞泉 「狂人日記」の意味・読み・例文・類語

きょうじんにっき〔キヤウジンニツキ〕【狂人日記】

原題、〈ロシアZapiski sumashedshawoゴーゴリ短編小説。下級官僚が次第に心を病み、ついにはスペイン王であることを主張するさまが日記形式でつづられる。
魯迅の短編小説。1918年「新青年」に発表周囲人間に食われるのではないかと妄想する男が書いた日記の形をとる。
色川武大長編小説幻聴幻視に悩まされる主人公の孤独を描く。昭和63年(1988)刊行。同年、第40回読売文学賞受賞。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「狂人日記」の意味・わかりやすい解説

狂人日記
きょうじんにっき
Zapiski sumasshedshego

ロシアの作家 N.ゴーゴリの日記体の小説。 1834年執筆。 35年文集『アラベスキ』 Arabeskiに発表。下級官吏で九等官ポプリシチンは自分の上役である局長に私淑し,心ひそかに局長の令嬢を恋しているが,令嬢と侍従武官の縁談がまとまって,過酷な現実に直面したとき,狂気の世界に入っていく。彼は自分が九等官ではなくて,スペインの国王だと空想することで,現実の屈辱感を克服しようとする。主人公の手記という形で,官僚社会を痛烈に風刺するとともに,狂気と錯乱の世界にしか生きられない下層役人の悲惨さを鋭く摘発した傑作

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「狂人日記」の意味・わかりやすい解説

狂人日記
きょうじんにっき

中国の作家、魯迅(ろじんルーシュン)の小説。1918年5月『新青年』に掲載され、のち『吶喊(とっかん)』(1923)に収められた。周囲の人間が自分を食おうとしているという被害妄想をもった患者の日記の形を通じて、中国の旧社会、儒教道徳の非人間性、それを否定する者をも飲み込む歴史の重みの認識を込め、それらすべてを突き崩す願いを「子供を救え」の叫びに凝縮させた作品。中国近代文学最初の作品とされる。

[丸山 昇]

『竹内好訳『阿Q正伝・狂人日記』(岩波文庫)』

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「狂人日記」の解説

『狂人日記』(きょうじんにっき)

魯迅(ろじん)の短編小説。1918年作。被害妄想狂患者の手記の形式をとった独白体の小説。「人が人を食う」現実を示して,「子供を救え」と訴え,古来の家族制度とそのイデオロギーに攻撃を加えた。

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旺文社世界史事典 三訂版 「狂人日記」の解説

狂人日記
きょうじんにっき

中国の文学者魯迅 (ろじん) の短編小説
1918年雑誌「新青年」に発表。文学革命に参加した魯迅が,ゴーゴリの小説に学び,狂人の手記という独白形式の白話 (はくわ) 体で家族制度と因襲思想を痛烈に批判し,魯迅文学の出発点となった。

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