朝鮮のチター型撥弦(はつげん)楽器。伽倻琴(かやきん)、琵琶(びわ)とともに新羅三絃(しらぎさんげん)の一つに数えられる。全長約150センチメートル、胴の表面にはキリ、裏面にはクリ材を用いる。弦は絹糸製で、6弦。奏者の手前から順に文絃、遊絃、大絃(たいげん)、棵上清(かじょうせい)、棵下清、武絃とよばれる。文絃、棵下清、武絃の3絃には可動の柱(じゅう)(雁足=琴柱(ことじ))を立て、残りは16個の固定した棵(フレット)上に張られ、向かって左側の第一棵で支えられる。棵はヒノキ製で、第一棵から順に幅約10~8センチメートル、高さ約7~1センチメートルで、順次狭く低くなっている。胴の端を膝(ひざ)の上にのせ、左手指で棵上を押さえながら、右手の人差し指と親指に挟んだ棒で弾奏する。棒は長さ約17センチメートル、海竹製で匙(スルデ)とよばれる。匙が当たる部分(玳瑁(たいまい))には、音が出ないようにするために柔らかい皮を張る。音域は約3オクターブ。『三国史記』によると、玄琴は、高句麗(こうくり)の長寿王(413―490)の初め、王山岳が、中国の晋(しん)の国から贈られた七絃琴をまねてつくったものとある。さらに王山岳が100余曲を作曲してこれを演奏したところ、黒い鶴(つる)が飛んできて舞い踊ったという伝えから玄鶴(げんかく)琴とよばれたが、のち鶴の字を取り去って玄琴となる。しかし、中国吉林(きつりん/チーリン)省集安(しゅうあん/チーアン)市にある舞踊塚古墳の壁画には玄琴の原型とみられる楽器があり、玄琴は5世紀以前につくられたとされている。
[原谷治美]
朝鮮のロング・チター属の6弦の撥弦楽器。全長約160cm,幅約22cm。胴の表板は桐,裏板は栗。表板の中ほどに16の固定フレット(棵)があり,尾部に近い第1棵から第16棵まで順に低く小さくなり,それらの上に第2,3,4弦(それぞれ遊,大,棵上清の名で呼ばれる)をのせる。第1,5,6弦(文,岐棵清,武)は可動柱(じ)(岐棵)で調弦し,17cmくらいの海竹製の撥で右手で弾く。雅楽祭礼楽,郷楽,正楽から散調まで広く使用されている。
執筆者:草野 妙子
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…棹の一定部分に刃形あるいは櫛形の木片を固着させ,開放弦の状態では弦から離れているが,必要に応じて弦を柱の上または柱と柱のあいだで強く押して,振動する長さを定める。朝鮮の玄琴(げんきん)はロング・チター属であるが,可動の柱と固定した櫛形のフレットを有する。【三谷 陽子】。…
…馬韓では5月の種まきの後と10月の収穫の後に,群衆による歌舞を行うと伝えられており,この時代の歌舞による祭事は,いずれも,今日の農楽や〈クッ〉と呼ぶ神事と関係があると考えられている。楽器についての記録は,弁韓と辰韓に,今日の代表的な弦楽器の伽倻琴や玄琴の祖形と見られる瑟(しつ)に似たチター属楽器があったことを伝えており,これは,朝鮮民族が早くから,長方形の弦楽器を好んで使用していたことを物語っている。(2)三国時代(4~7世紀後半) 高句麗,百済,新羅それぞれに異なる特色があらわれる。…
※「玄琴」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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