日本大百科全書(ニッポニカ) 「瑜伽行派」の意味・わかりやすい解説
瑜伽行派
ゆがぎょうは
中観(ちゅうがん)学派と並ぶインド大乗仏教二大学派の一つ。サンスクリット名はヨーガーチャーラYogācāra。瑜伽行唯識(ゆいしき)学派また単に唯識学派ともいう。主として玄奘(げんじょう)によって中国に将来され、中国・日本では法相(ほっそう)宗とよばれた。もともとは、坐禅瞑想(ざぜんめいそう)の間に外界の存在や心象が消えうせ、根源的な心識のみが唯一の実在として残る観行(かんぎょう)に基づいて生じた思想であったが、『解深密経(げじんみっきょう)』や『瑜伽師地論(ゆがしじろん)』などの基本的著作、弥勒(みろく)(マイトレーヤナータ。歴史的人物か否か不明)、無著(むじゃく)(アサンガ、4~5世紀)、世親(せしん)(バスバンドゥ、400―480ころ)、陳那(じんな)(ディグナーガ、480―540ころ)、護法(ごほう)(ダルマパーラ、530―561)、安慧(あんね)(スティラマティ、510―570ころ)その他多数の巨匠の論書を経て、徹底した主観的観念論の哲学体系を完成するに至った。外界の対象の存在を否定し、世界万象は人の認識の表象にすぎないと説く。7世紀ころより有相(うそう)唯識派と無相(むそう)唯識派に分かれるが、インド仏教の最後まで活動を続けた。
[梶山雄一]