ヨーガ学派(読み)よーががくは(英語表記)Yoga

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヨーガ学派」の意味・わかりやすい解説

ヨーガ学派
よーががくは
Yoga

インド六派哲学の一つ。ヨーガの起源はインダス文明にあるといわれるが、その行法が説かれているのは、仏教以後の中期のウパニシャッド(『カタ』などの書)からである。サーンキヤ学派思想的には深い関係を有し、その二元論的思想を共有する。この派の開祖をヒランヤガルバ(金胎(こんたい)神)に帰する伝承もあるが、通常はパタンジャリが開祖で、根本経典『ヨーガ・スートラ』を著したといわれる。3~5世紀ころにできたといわれるこの書は、仏教などの影響をも受けながら、ヨーガの体系をまとめたものである。これにはブヤーサVyāsa(5~6世紀)の注釈『バーシュヤ』、バーチャスパティ・ミシュラ(9世紀)の復注『タットバ・バイシャーラディー』、ボージャ王(11世紀)の注釈『ラージャ・マールタンダ』、ビジュニヤーナビクシュ(16世紀)の注釈『ヨーガ・バールティカ』などがある。『ヨーガ・スートラ』は、最初にヨーガを心の働きの停止と定義し、このときに観照者は真の霊魂プルシャ(霊我(れいが))の本性に安住するという。ついで心の働きを説明し、修行の方法を説くが、それはヨーガの八支にまとめられる。八支とは、禁戒勧戒(かんかい)、坐法(ざほう)、呼吸の抑制、感官の制御、執持(しゅうじ)(集中)、静慮(じょうりょ)、三昧(さんまい)である。禁戒とは不殺生(ふせっしょう)、真実、不偸盗(ふちゅうとう)、貞潔、無所得の五戒。勧戒とは潔斎(けっさい)、満足、苦行読誦(どくじゅ)、至上神への帰依(きえ)の五つ。これらを守って息を調え感官を制御し、心の集中、統一を行い、最後に、心の働きとは別な霊我の存在を知り、霊我の本性に安立することを解脱(げだつ)(独存)とする。

[村上真完]

『岸本英夫著『宗教神秘主義』(1958・大明堂)』『松尾義海著『ヨーガ根本聖典』(『世界の名著1』所収・1969・中央公論社)』『本多恵著『ヨーガ書註解』(1978・平楽寺書店)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ヨーガ学派」の意味・わかりやすい解説

ヨーガ学派
ヨーガがくは
Yoga

インドの正統バラモン系統の哲学派の一つ。ヨーガの修行によって解脱に達することを教える学派。パタンジャリに帰せられる『ヨーガ・スートラ』を根本経典とする。この学派の思想には,仏教の影響もあり,形而上学説はサーンキヤ学派のものと概して同じであるが,一個の霊魂としての最高神を認める点を異にしている。心の作用を止滅するためには制戒 yama,内制 niyamaを実践し,正しい坐法 āsanaで坐し,調息 prāṇāyāmaにより呼吸を整え,制感 pratyāhāraによって感覚器官を制御し,総持 dhāraṇāにより心を一ヵ所に結び,静慮 dhyānaによって念じる対象と一体となり,三昧 samādhiによって対象のみが輝いて心は空のようになる。そして,対象に完全に束縛されず,心作用の余力を滅し去った状態を真のヨーガという。

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