インド大乗仏教の論書。唯識派(ゆいしきは)の基本的な典籍。原題はサンスクリットで《ヨーガーチャーラブーミYogacārabhūmi》。略称《瑜伽論》。著者は漢訳ではマイトレーヤ(弥勒),チベット語訳ではアサンガ(無著)とする。4世紀ころの成立。サンスクリット原典(一部分のみ既刊)のほか,チベット語訳,漢訳(玄奘の全訳,ほかに部分訳)が現存。漢訳で全100巻の膨大なもので,全体は五分され,本地分(1~50巻),摂決択分(51~80巻),摂釈分(81,82巻),摂異門分(82~84巻),摂事分(85~100巻)からなる。そのうち,本地分が中心で,17段階に分けてヨーガの修行の階梯を説いている。また,三性・三無性,唯識,阿頼耶識などの唯識派の基本的な問題はすべて本書中に取り上げられている。
→唯識派
執筆者:末木 文美士
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
インド仏教、瑜伽行(ゆがぎょう)派(唯識(ゆいしき)学派)の主要文献の一つ。チベット訳によればサンスクリット名はヨーガーチャーラ・ブーミYogācāra-bhūmi(瑜伽行地論)。漢訳(全100巻)は弥勒(みろく)作、チベット訳は無著(むじゃく)作とされ、複雑な成立過程をもつとみられる。本書は、瑜伽行者の境(きょう)・行(ぎょう)・果(か)を17地に分けて説明する本地分(ほんじぶん)(漢訳1~50巻)、その要義を解明する摂決択分(しょうけっちゃくぶん)(同51~80巻)など五部に分かれ、阿頼耶識(あらやしき)、三性説(さんしょうせつ)、その他あらゆる問題を詳細に論究している。いわば大乗仏教の百科全書である。本地分中、「声聞地(しょうもんじ)」「菩薩地(ぼさつじ)」は単独に用いられたようで、ともにサンスクリット本も現存する。『菩薩地持経(じきょう)』『菩薩善戒経(ぜんかいきょう)』は同「菩薩地」の異本である。
[竹村牧男]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…現存のものでは,寛治2年(1088)模工僧観増の刊記のある《成唯識論(じようゆいしきろん)》10巻(残巻,正倉院蔵),元永2年(1119)模工僧延観の刊記のある《成唯識論》巻十(京都守屋家蔵)などが古いほうである。このほか春日版と称されるもののうちには,建暦2年(1212)刊《瑜伽師地論》100巻,承元3年(1209)刊《法華経普門品》3333巻,嘉禄年間(1225‐27)に刊行された《大般若波羅蜜多経》600巻など,質量ともにすぐれたものがある。なお,当時の版木の現存するものも比較的多く,興福寺北円堂に現存する《成唯識論述記》の版木は,1195年(建久6)の彫刻で,現存古刻版木のうち最も古いものの一つである。…
…622年(武徳5)に具足戒をうけ,まもなく成都から長江(揚子江)を下って荆州に出,相州,趙州をへて落着きを取り戻した国都の長安に舞い戻り,大覚寺に住んで道岳,法常,僧弁といった学僧から俱舎論や摂大乗論の教義を授けられた。しかし,多くの疑義を解決することができず,かくなる上は親しく原典につき,本場の学者から回答をうるにしかず,とりわけ仏教哲学の最高峰たる十七地論つまり瑜伽師地論を得たいものだと,インド留学を決意するにいたった。 唐の法律では国外への旅行が禁止されていたので,志を同じくする僧数名とともに願書を出したが却下された。…
…彼に帰せられる著書としては《大乗荘厳経論》《中辺分別論》《法法性分別論》《究竟一乗宝性論》《現観荘厳論》などがある。なお《瑜伽師地論》は漢訳では弥勒菩薩説となっているが,この論書の著者をめぐっては,マイトレーヤ説,アサンガ説,複数の人の手になるとみる説などあっていまだ定説はない。とにかく,弥勒菩薩信仰におけるマイトレーヤとは別の人物として彼は取り扱われるべきである。…
…そこでマイトレーヤ(弥勒)菩薩から大乗の空思想を学び,大乗仏教徒となった。また,他の人々にも,マイトレーヤが直接《瑜伽師地論(ゆがしじろん)》(《十七地経》)を説くように要請し,アサンガがその解説をすることにした。これが唯識思想流布の端緒とされる。…
※「瑜伽師地論」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
〘 名詞 〙 年の暮れに、その年の仕事を終えること。また、その日。《 季語・冬 》[初出の実例]「けふは大晦日(つごもり)一年中の仕事納(オサ)め」(出典:浄瑠璃・新版歌祭文(お染久松)(1780)油...
12/17 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
11/21 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
10/22 デジタル大辞泉を更新
10/22 デジタル大辞泉プラスを更新