甘粕正彦(読み)あまかすまさひこ

共同通信ニュース用語解説 「甘粕正彦」の解説

甘粕正彦

甘粕正彦あまかす・まさひこ 1891年、仙台生まれ。陸軍士官学校卒。けがのため歩兵から憲兵に転じ、憲兵大尉に。1923年、関東大震災混乱時に大杉栄おおすぎ・さかえら3人を殺害(甘粕事件)。軍法会議で懲役10年の判決を受けたが、26年に仮出獄し、翌年渡仏。帰国後、旧満州に渡り、「満州国」建国に関与した。39年に満州映画協会理事長に就任。終戦直後の45年8月20日、自殺した。村上むらかみもとかさんの漫画「龍―RON―」など後世の作品で人物像が描かれ、ベルナルド・ベルトルッチ監督の映画「ラストエンペラー」では坂本龍一さかもと・りゅういちさんが甘粕役を演じた。

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20世紀日本人名事典 「甘粕正彦」の解説

甘粕 正彦
アマカス マサヒコ

大正・昭和期の陸軍憲兵大尉 満州国民政部警務司長;満州映画協会理事長。



生年
明治24(1891)年1月26日

没年
昭和20(1945)年8月20日

出生地
宮城県仙台市

出身地
山形県

学歴〔年〕
陸士(第24期)〔明治45年〕卒

経歴
明治45年歩兵少尉、ひざの怪我で大正7年から憲兵に転じ10年憲兵大尉。11年渋谷憲兵分隊長、12年8月麴町憲兵分隊長兼任となり、関東大震災直後の9月16日、アナキスト大杉栄と妻の伊藤野枝、大杉の甥で7歳の橘宗一を隊内で扼殺した。軍法会議で懲役10年、部下の森慶次郎曹長は3年の判決。軍部の密命という推測もある。2年余で出獄、昭和2年フランスに渡り、4年帰国。5年大川周明の手引きで満州に渡り、満洲事変、満州建国の黒幕として謀略活動。7年満州国民政部警務司長、満州国協和会中央本部総務部長。14年岸信介の推薦で満州映画協会理事長。満州国の首都・新京(長春)を根城関東軍をもしのぐ実力をふるった。20年8月ソビエト軍の新京侵入直後、自決した。角田房子著の伝記「甘粕大尉」がある。

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百科事典マイペディア 「甘粕正彦」の意味・わかりやすい解説

甘粕正彦【あまかすまさひこ】

陸軍軍人。仙台市出身。1912年陸軍士官学校卒。1923年東京麹町憲兵分隊長のとき,関東大震災の混乱に乗じて無政府主義者大杉栄伊藤野枝らを絞殺(甘粕事件),軍法会議で懲役10年の判決を受けるが,恩赦により3年で出所,陸軍機密費でフランスに渡る。1929年帰国し,大川周明の手引きで中国東北部へ渡り,関東軍に協力して満州事変などの裏で種々画策,〈満州国〉建設に関与する。満州国協和会中央本部総務部長・満州映画協会理事長などを歴任したが,敗戦で自決。→甘粕事件

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「甘粕正彦」の意味・わかりやすい解説

甘粕正彦
あまかすまさひこ
(1891―1945)

大正時代の軍人、昭和時代の満州国要人。明治24年1月26日宮城県に生まれる。父は警察官。陸軍士官学校卒業後、けがのため憲兵に転科し、1921年(大正10)憲兵大尉となった。渋谷憲兵分隊長兼麹町(こうじまち)憲兵分隊長のとき、1923年9月の関東大震災にあい、大杉栄(おおすぎさかえ)らを殺害、同年軍法会議で懲役10年の判決を受けた。1926年10月に出獄し、翌1927年渡仏。帰国後、中国東北(満州)に渡り、関東軍の満州占領計画に協力した。1932年(昭和7)に満州国民政部警務司長、のち協和会中央本部総務部長、満州映画協会理事長などを歴任した。昭和20年8月20日自決。

[吉見義明]

『角田房子著『甘粕大尉』(中公文庫)』

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改訂新版 世界大百科事典 「甘粕正彦」の意味・わかりやすい解説

甘粕正彦 (あまかすまさひこ)
生没年:1891-1945(明治24-昭和20)

陸軍軍人,のち満州国の要人。仙台市生れ。1912年陸軍士官学校卒,21年憲兵大尉となる。23年9月東京麴町憲兵分隊長のとき,関東大震災の混乱に乗じてアナーキスト大杉栄らを殺害し,軍法会議で懲役10年の判決をうける(甘粕事件)。26年仮出所し,フランスに渡る。29年帰国後大川周明の手引きで満州に渡り,満州事変に際し裏面で関東軍に協力,のち満州国民政部警務司長,協和会中央本部総務部長,満州映画協会理事長などを歴任。敗戦直後の45年8月20日長春(当時は新京)で自決。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「甘粕正彦」の意味・わかりやすい解説

甘粕正彦
あまかすまさひこ

[生]1891.1.26. 宮城
[没]1945.8.20. 満州(現・中国東北部),新京
陸軍軍人,旧満州国要人。 1912年,陸軍士官学校卒業後,憲兵司令部副官などを経て,21年憲兵大尉となる。 23年9月 16日,麹町憲兵分隊長として無政府主義者大杉栄,大杉の妻で婦人運動家伊藤野枝,甥の橘宗一 (6歳) を連行し,絞殺した (甘粕事件) 。甘粕は軍法会議にかけられ,懲役 10年の判決を受けたが,3年後の 26年仮出所,30年中国に渡る。 31年の満州事変以後,軍の謀略・工作活動にたずさわり,満州国建設に関与した。のち,満州映画協会理事長などを歴任。 45年第2次世界大戦終結と同時に満州でピストル自殺した。

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「甘粕正彦」の解説

甘粕正彦 あまかす-まさひこ

1891-1945 大正-昭和時代前期の軍人。
明治24年1月26日生まれ。大正12年東京麹町(こうじまち)憲兵分隊長(憲兵大尉)となり,関東大震災の混乱に乗じて大杉栄,伊藤野枝らを殺害し,懲役10年の刑をうける(甘粕事件)。昭和4年満州(中国東北部)にわたり,満州国建国に関与。のち満州映画協会理事長。昭和20年8月20日新京(現長春)で自殺。55歳。宮城県出身。陸軍士官学校卒。
【格言など】大ばくちもとも子もなくすってんてん(満映理事長室の黒板にのこした辞世の句)

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367日誕生日大事典 「甘粕正彦」の解説

甘粕 正彦 (あまかす まさひこ)

生年月日:1891年1月26日
大正時代;昭和時代の陸軍軍人。憲兵大尉
1945年没

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