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生殖器崇拝 せいしょくきすうはい

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

生殖器崇拝
せいしょくきすうはい

フェティシズムの一種で,陽物崇拝ともいう。農作物の豊穣や女性の安産,多産を願って生殖器像を崇拝すること。一般に男根崇拝 phallicism (ファリシズム) が多く,その形を拡大,変形または象徴化して用いられる。女性器の場合には腰部などを誇張した裸女像の形をとる。生殖器崇拝は農耕などのある程度の経済的進歩が達成された民族にみられ,祭礼時の模擬的性交,性的無秩序を伴う祝宴などと一緒に現れることが多い。また不妊症に対する護符,悪霊に対する祓いなどの呪術的意味をもつこともある。インドでは破壊と再生の神,シバ神が男根の形をとり,アフリカのヨルバ族フォン族では豊饒神エレクバの神域に性器像を奉納する。エジプト,ギリシアなどの古代文明国にも行われていた。日本でも日光金精峠の金精大明神,静岡県掛川市の孕石をはじめ,道祖神像など陰陽道と結びついて広くみられる。また田植え祭や豊年祭に男根像を用いることも多い。

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大辞林 第三版の解説

せいしょくきすうはい【生殖器崇拝】

男女の生殖器をかたどった象徴に豊穣多産などを祈念し、それらを尊崇すること。性器崇拝。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

生殖器崇拝
せいしょくきすうはい

生殖器(性器)に対する崇拝で、生殖器のもつ神秘的な力、とくに生殖器により象徴される生産力、豊穣(ほうじょう)力に対する信仰。男性器崇拝と女性器崇拝があるが、両者が対(つい)になって崇(あが)められることが多い。またしばしば性器をかたどった像をつくったり描いたりして崇拝する。歴史的には古く旧石器時代にさかのぼることができ、たとえばオーリニャック期の女性裸像は乳房、腹部、臀部(でんぶ)が強調され、陰部には裂け目がはっきり表されているが、他の手足、顔など生殖と関係ない部分は省略されている。日本の縄文時代の土偶にも同様の傾向を示すものがある。これらの時代には男性器を表すものは非常に少ないが、古代文明以降になると男根崇拝が際だっている。たとえば古代ギリシアのディオニソス祭、古代ローマのバッカス祭やリベル祭のときには男根が重要な役割を演じている。とくに男根崇拝が発達した地域の一つはインドであり、シバ神の聖なる男根を表すリンガム像が数多くつくられ、信仰の対象となっている。日本でもしばしば石や木でつくった男根が道祖神として祀(まつ)られている。
 生殖器崇拝の第一には、直接的にその性力に対するもので、妊娠、多産、安産を願ってなされる。日本では男性器、女性器を模した石が子授け石、子うみ石として子のない女性に拝まれる。正月に新婚の家に木や石の男根形のものを持って行く風習や、小(こ)正月に女の尻(しり)を棒(しばしば男根形をしており、鹿児島県ではハラナンボンという)でたたく風習が各地にある。第二には、自然の生産力に結び付けた崇拝がある。宗教民族学者エリアーデが集めた事例では、多くの社会で大地を女性と考え、生殖行為と農耕を同一視する。そして鋤(すき)を男性器、すき返された畑のうねを女性器とみなしたり、農耕始めのときに畑や田で性行為を模した動作を行う風習が世界各地にみられる。たとえばウクライナ地方では若い夫婦が耕された畑の上を転がされたという。メキシコのマヤ人の一部は、牛の陰嚢(いんのう)でつくった袋にトウモロコシの種を入れ、腰の前に吊(つ)るして種を播(ま)く。種を播くのは男で、精液を放出することを象徴している。日本でも小正月の豊作を願う祝祭や田植のときに男根形のものを使ったり、ひわいな動作をする地方がある。愛知県の田県(たがた)神社の豊年祭では木製の男根像を神幸させる。第三には、悪霊や悪気を祓(はら)う呪力(じゅりょく)をもつものとして性器を崇拝する。女陰が邪視(邪眼)を防ぐという信仰がしばしばみられる。アラビアやトルコでは女陰形の子安貝が邪視を防ぐとされていた。古代ローマのプリニウスの『博物誌』には、女性を裸にして陰部を露出させると害虫が落ちると記されている。日本でも、先に道祖神がしばしば男根形をしていると書いたが、道祖神は村に入ってくる悪霊、悪病を追い払う神である。女性の陰毛が魔除(まよ)け、御守りになるという俗信もよく聞かれる。[板橋作美]

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