翻訳|living wage
最低賃金または賃金の算定にあたって,その基準となる原則または考え方の一つであって,通例もう二つの基準とされる〈支払能力〉の原則,〈公正比較〉の原則(公正賃金)と区別されている。すなわち,これ以下に引き下げられない生活の必要を賃金決定の第一義的な基準とするもので,この上に積み上げられる生活の必要を否定するものではない。もとより労働者本人だけではなく家族の生活の必要をも考慮するが,賃金論でいう労働力の価値とか労働力の再生産という概念とはまったく異なる次元の問題である。一般に生活賃金の原則は労働者に有利であるといわれてきたが,生活賃金の原則によって最低賃金(最低賃金制)が決められたからといって,最低生活を保障する賃金が実現されるわけではない。この原則を適用する社会の最低生活費を計算する方法は,いくつもありうるからであり,労使によって計算方法も違うのが当然である。最低賃金の法的規制は,団体交渉における労使の交渉力に影響を与えるとともに,団体交渉を補完する一つの要因にほかならないのである。生活賃金説は,19世紀末のイギリス労働運動のなかから生まれ,世界に広まっていったが,日本では第2次大戦直後の経済混乱の時期に導入された。
→賃金
執筆者:高橋 洸
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…したがって,組織率が著しく高く,多くの産業で労働協約が締結されているスウェーデンなど少数の先進工業国では最低賃金制を設けていない。
[最低賃金の基準と役割]
最低賃金の基準は,法律のなかで,なんら規定しないもの,労働者の生活費の確保をうたうもの(生活賃金),他の労働者の賃金との均衡の原則(公正賃金)を規定するもの,経済変動あるいは産業の支払能力をもあわせ指示するもの,などさまざまである。生活賃金を中心におくところが多いが,発展途上国では実際決められるものは著しく低いのがふつうである。…
※「生活賃金」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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