生活賃金(読み)せいかつちんぎん(その他表記)living wage

翻訳|living wage

精選版 日本国語大辞典 「生活賃金」の意味・読み・例文・類語

せいかつ‐ちんぎんセイクヮツ‥【生活賃金】

  1. 〘 名詞 〙せいかつきゅう(生活給)〔現代語大辞典(1932)〕

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改訂新版 世界大百科事典 「生活賃金」の意味・わかりやすい解説

生活賃金 (せいかつちんぎん)
living wage

最低賃金または賃金算定にあたって,その基準となる原則または考え方の一つであって,通例もう二つの基準とされる〈支払能力〉の原則,〈公正比較〉の原則(公正賃金)と区別されている。すなわち,これ以下に引き下げられない生活の必要を賃金決定の第一義的な基準とするもので,この上に積み上げられる生活の必要を否定するものではない。もとより労働者本人だけではなく家族の生活の必要をも考慮するが,賃金論でいう労働力の価値とか労働力の再生産という概念とはまったく異なる次元の問題である。一般に生活賃金の原則は労働者に有利であるといわれてきたが,生活賃金の原則によって最低賃金(最低賃金制)が決められたからといって,最低生活を保障する賃金が実現されるわけではない。この原則を適用する社会の最低生活費を計算する方法は,いくつもありうるからであり,労使によって計算方法も違うのが当然である。最低賃金の法的規制は,団体交渉における労使の交渉力に影響を与えるとともに,団体交渉を補完する一つの要因にほかならないのである。生活賃金説は,19世紀末のイギリス労働運動のなかから生まれ,世界に広まっていったが,日本では第2次大戦直後の経済混乱の時期に導入された。
賃金
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「生活賃金」の意味・わかりやすい解説

生活賃金
せいかつちんぎん

賃金は労働者自身とその家族の一定の生活を保障する水準であるべきだという思想に基づいて算定された賃金のこと。この思想は 19世紀末のイギリス労働運動の過程で生れたといわれるが,その内容は時代の変遷とともに変化してきている。たとえばこの思想をもとに 1923年イギリス労働党政権が考案したマーケット・バスケット方式 (→物量方式 ) でも,当初は単に最低の生活水準維持に必要な食料品目数量を定め,それにより購買する費用を算出し,賃金の基準としたが,そののち費目の対象が住居費雑費などの全生計費目に拡大されるようになった。

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世界大百科事典(旧版)内の生活賃金の言及

【最低賃金制】より

…したがって,組織率が著しく高く,多くの産業で労働協約が締結されているスウェーデンなど少数の先進工業国では最低賃金制を設けていない。
[最低賃金の基準と役割]
 最低賃金の基準は,法律のなかで,なんら規定しないもの,労働者の生活費の確保をうたうもの(生活賃金),他の労働者の賃金との均衡の原則(公正賃金)を規定するもの,経済変動あるいは産業の支払能力をもあわせ指示するもの,などさまざまである。生活賃金を中心におくところが多いが,発展途上国では実際決められるものは著しく低いのがふつうである。…

※「生活賃金」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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