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最低賃金制 さいていちんぎんせい minimum wage system

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

最低賃金制
さいていちんぎんせい
minimum wage system

賃金の最低限度を国家が法律や命令などにより定める制度。 1894年ニュージーランドの「強制仲裁法」で初めて採用され,1928年には国際労働機関 ILOが「最低賃金決定制度の創設に関する条約」 (26号) を採択,現在約 100ヵ国が批准している。

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知恵蔵の解説

最低賃金制

最低賃金法に基づき、国が賃金の最低限度を定め、使用者は、その最低賃金額以上の賃金を労働者に支払わなければならないとされている制度。最低賃金は、最低賃金法に定められた用件をふまえ、中央最低賃金審議会(厚生労働相の諮問機関)が上げ幅の目安を決定。この目安に基づき都道府県の審議会が地域の実情に応じた最低賃金を決める仕組み。仮に最低賃金制度より低い賃金を労働者、使用者双方の合意の上で定めても、それは法律によって無効とされ、最低賃金額と同様の定めをしたものとされる。従って、最低賃金未満の賃金しか支払わなかった場合には、最低賃金額との差額を支払わなくてはならない。日本の最低賃金には、審議会形式に基づく地域別最低賃金産業別最低賃金及び労働協約の拡張方式に基づくものがある。地域別最低賃金は、都道府県内のすべての使用者及び労働者に、パートタイマーアルバイトなど雇用形態の別なく適用される。これまで、最低賃金が生活保護給付水準を下回る逆転現象が一部都道府県に見られたが、「労働者が健康で文化的な最低限度の生活を営むことができるよう」生活保護との整合性に配慮するよう明記することで、最低賃金法改正が2007年の国会で成立することになった。

(桑原靖夫 獨協大学名誉教授 / 2008年)

出典|(株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」
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デジタル大辞泉の解説

さいていちんぎん‐せい【最低賃金制】

労働者の最低賃金を公的に定め、使用者はそれ以下の額で雇用してはならないとする制度。日本では、厚生労働大臣または都道府県労働局長が最低賃金審議会の調査審議に基づいて決定する職権方式が中心になっている。

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百科事典マイペディアの解説

最低賃金制【さいていちんぎんせい】

国家が経営者に対して所定の最低賃金を定め,それ以下での支払いを法律的手段によって禁止する制度。労働者の生活確保,特に未組織の低賃金労働者の賃金引上げを目的として19世紀末以降発達した社会政策の一つで,1928年にはこれに関してILO条約(26号)が採択され,日本でもそれを受けて1959年に最低賃金法(1968年大改正)が制定された。
→関連項目賃金労働基準法

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世界大百科事典 第2版の解説

さいていちんぎんせい【最低賃金制】

最低賃金minimum wageとは,これ以下を支払ってはならないという最低限の賃金の意味である。この最低賃金には労働協約で定めるものと法定のものとの別がある。ふつう最低賃金制度(最賃制)という場合,法定の最低賃金を決める制度をさす。この制度を最初に設けたのは1894年のニュージーランドで,96年にはオーストラリアビクトリア州でも設けられた。1909年イギリスで賃金局法が成立したあと,他のヨーロッパ諸国,アメリカ(州法)に広がりはじめ,第1次大戦後はラテン・アメリカ諸国でも採用され,28年にはILO(国際労働機関)で,〈最低賃金決定制度の創設に関する条約〉(第26号)が採択されるに至った(日本は1971年4月に批准)。

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大辞林 第三版の解説

さいていちんぎんせい【最低賃金制】

労働者の賃金の最低額を法律(最低賃金法)によって決定し、その額以下で労働者を雇用することを禁止する制度。日本では、地域別・産業別に最低賃金を定めている。

出典|三省堂
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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

最低賃金制
さいていちんぎんせい
minimum wage system

法律や労働協約によって賃金の最低限を定める制度。低賃金をなくし、賃金水準を全般的に引き上げることを目的とした制度である。[湯浅良雄]

沿革

世界で最初の最低賃金制は、1894年のニュージーランドの強制仲裁法と、96年のオーストラリア、ビクトリア州の工場法において創設され、欧米の先進資本主義国に大きな影響を与えた。20世紀に入ると、1909年にイギリスで賃金委員会法が成立し、フランスでも15年に家内労働法が成立し、アメリカにおいても1912年以降、州法によって最低賃金制が次々に導入されていった。しかし、最低賃金制が急速に拡大するのは第一次世界大戦後である。このようななかで、ILO(国際労働機関)は28年に「最低賃金決定機構の創設に関する条約」(26号条約)ならびに勧告を採択し、その普及に努めた。また、ILOは、70年には「開発途上国をとくに考慮した最低賃金決定に関する条約」(131号条約)と勧告を採択した。この結果、98年現在、第26号条約の批准国は開発途上国も含め100か国(ILO加盟国は174か国)の多くに達している。
 使用者と労働者との自由な契約を基本原則とする資本主義社会では、賃金は本来、労使の自主的な団体交渉によって決定されるべきとされてきた。しかし、労働組合に組織化されていない不熟練の未組織労働者の場合、その賃金は使用者によって一方的にきわめて低い水準に押さえ付けられざるをえない。しかも、このような状況が放置されるならば、それは未組織労働者の生活を破壊するのみならず、組織労働者の賃金も低位に押しとどめる錘(おもり)の役割を果たすことになる。
 歴史的には、独占資本主義段階になって大量に不熟練労働者が発生すると、彼らは苦汗制度のもとに低賃金労働者として利用され、独占資本によって全労働者の賃金を押さえ付けるために体系的に活用されるようになった。最低賃金制は、このような事態に対し労働組合が組織されず、賃金がきわめて劣悪な領域に国家権力を介入せしめることによって、未組織労働者の賃金の引上げを図り、その最低生活を保障するとともに、労働者全体の賃金の底上げの機能を果たすことをねらいとしている。労働者によって要求され、その結果、独占資本主義段階の社会政策として確立した制度である。
 なお、このほか、最低賃金制は、賃金の最低限を法的に強制するがゆえに、企業相互の公正な競争の確保、企業経営の近代化、労働市場の近代化、有効需要の喚起などの役割も果たしている。しかし、このような最低賃金制がその機能を有効に発揮するかどうかは、その国におけるさまざまな条件によって、とりわけ労働組合の力量によって左右されることに注意しなければならない。すなわち、労使の力関係いかんによっては、賃金の引上げを目的とした最低賃金制が、逆に低賃金を固定化し労働者を分断・支配する道具に転化する場合もありうるからである。[湯浅良雄]

内容

最低賃金制の内容は、各国の歴史的・具体的条件によりさまざまである。たとえば、世界の各国が現在採用している最低賃金の決定方式には、(1)賃金委員会または賃金審議会方式(例日本)、(2)労働協約の拡張適用方式(例フランス、ドイツ)、(3)仲裁裁判所または仲裁委員会方式(例ニュージーランド、オーストラリア)、(4)法律によって直接に決める法令方式(例アメリカ)、がある。また、その適用範囲も、全産業にわたり一律の最低基準を設定するもの、その適用範囲を一部の産業や業種にのみ限定するものなど、さまざまである。[湯浅良雄]

日本の最低賃金制

日本において最低賃金制が確立したのは第二次世界大戦後であり、しかも独立の最低賃金法(昭和34年法律137号)が制定されたのは1959年(昭和34)になってからのことである。すなわち、日本においても、1947年に成立した労働基準法(昭和22年法律49号)によって、ようやく最低賃金制が設けられることになった(28条~31条)。しかしそれは、当時の労働大臣または都道府県労働基準局長が、必要に応じて賃金審議会の答申、または建議に基づいて最低賃金を決定するという方式のものであった。したがって、同法によれば、最低賃金は行政官庁が必要を認めた場合にのみ、その決定がなされるにすぎない。このため、敗戦後の経済情勢のなかで、最低賃金制はほとんど機能しないという状態が続いた。1959年4月に単独法として成立した最低賃金法は、このような状況のなかで、主として、全国一律最低賃金制の確立を強く要求した労働組合運動に対する政府の対応として成立したものである。[湯浅良雄]

最低賃金の決定方式

最低賃金法は、最低賃金の原則(3条)を「最低賃金は、労働者の生計費、類似の労働者の賃金及び通常の事業の賃金支払能力を考慮して定められなければならない」とし、最低賃金の決定方式としては、(1)業者間協定に基づく最低賃金(9条)、(2)業者間協定に基づく地域的最低賃金(10条)、(3)労働協約に基づく地域的最低賃金(11条)、(4)最低賃金審議会の調査審議に基づく最低賃金(16条)、の4方式を定めていた。
 1960年以降、この法律に基づき、最低賃金制がしだいに普及するが、この法律では主たる最低賃金の決定方式が業者間協定に置かれ、(4)の審議会方式は(1)~(3)の方式が困難な場合にのみ採用された。このような業者間協定に基づく最低賃金の決定方式は、労使対等の原則を定めたILOの第26号条約に抵触し、また世界的にも例のないものであって、その実施が矛盾を深めるにしたがって、労働組合からの反対の声と批判がしだいに増大していった。このため、1963年以降数次にわたって出された中央最低賃金審議会の答申を基礎として、68年5月に最低賃金法の改正が行われた。その改正の重点は、(1)の業者間協定に基づく最低賃金と、(2)の業者間協定に基づく地域的最低賃金の2方式を廃止したことにあった。したがって、現在の日本では、労働協約に基づく地域的最低賃金と、最低賃金審議会の調査審議に基づく最低賃金とによって法律が運用されている。
 労働協約に基づく最低賃金というのは、一定地域の同種の労働者および使用者の大部分に、賃金の最低額について実質的に内容を同じくする労働協約が適用されている場合に、その労働協約の締結当事者である労働組合または使用者の全部の申請により、当該労働協約上の賃金の最低額に関する定めに基づき、当事者以外のアウトサイダーをも含めた同種の労働者および使用者の全部に適用する最低賃金を決定するものである。これは労働協約の拡張適用方式とよばれるものであるが、日本においては労働組合が企業別に組織されているため、産業別、業種別に最低賃金を協約化する実態があまりなく、この協約方式による最低賃金は、今日までほとんどその適用をみていない。ただ、企業別組合が当該経営と締結する「企業内最賃」とよばれるものはある。
 最低賃金審議会の調査審議に基づく最低賃金というのは、厚生労働大臣または都道府県労働基準局長が、一定の事業、職場または地域について、賃金の低廉な労働者の労働条件の改善を図るために必要があると認めるときは、最低賃金審議会の調査審議を求め、その意見を尊重して最低賃金を決定するものである。これは職権決定方式とよばれるものであって、現在の日本において、最低賃金の決定方式のなかで中心的な役割を果たしている。
 なお、これには都道府県ごとに包括的な地域最低賃金を定める地域別最低賃金と、都道府県内の特定の産業を対象とした産業別最低賃金とがある。
 職権決定方式のなかで大きな役割を果たしている最低賃金審議会は、厚生労働省に中央最低賃金審議会、都道府県に地方最低賃金審議会が置かれ、いずれも労働者代表委員、使用者代表委員、公益代表委員の三者同数をもって構成されている。しかし、公益委員の選出は労使の同意制または協議制ではなく、行政当局の一方的な任命制である。したがって、現在の審議会の構成は労働者側にとって不利であり、経営側と政府の主導性を保障する仕組みになっている。[湯浅良雄]

日本の現状

最低賃金の実施状況を1998年(平成10)の数値でみると、全国で247件の産業別最低賃金が決定されており、これらの最低賃金の適用を受ける労働者は461万人(全労働者数の約9.1%)である(1999年1月現在)。また、地域別最低賃金も毎年改定作業が実施されている。
 前述のように、日本の最低賃金は、都道府県ごとにばらばらに決定され、全国的な最低基準としての統一性が確保されない仕組みになっている。
 このような欠陥を補うため、1978年(昭和53)からは中央最低賃金審議会が地方最低賃金審議会に対し、改定額の目安を提示するようになり、制度運営上の手直しが行われた。これは、全都道府県をA~Dの4ランクに分け、地域別の最低賃金の引上げ額の目安を提示するものであり、この目安額に基づいて各地方の最低賃金審議会が地域別最低賃金額の改定作業を行うようになっている。しかし現状においては、日本の伝統的に劣悪な最低賃金額とその地域格差を打破するにはほど遠い水準にある。ちなみに、98年度の地域別最低賃金は、Aランクの東京都、大阪府で日額5465円、Dランクの青森県、鹿児島県など6県で4713円になっている。また、その違反率は、非常に低い監督率にもかかわらず、毎年10%近い数字になっている。[湯浅良雄]
『藤本武著『最低賃金制』(岩波新書) ▽黒川俊雄著『最低賃金制入門』新版(労働旬報社・労旬新書) ▽相沢与一著『現代最低賃金制論』(1978・労働旬報社) ▽小越洋之助著『日本最低賃金制史研究』(1987・梓出版社) ▽ジェラルド・フランク・スタール、労働省労働基準局著『世界の最低賃金制度』(1989・産業労働出版社協会) ▽五十畑明著『新たなる最低賃金制度』(1996・日本労務研究会) ▽逆瀬川潔著『中小企業と労働問題――労働時間・最低賃金・退職金』(1996・日本労働研究機構) ▽労働省労働基準局著『最低賃金決定要覧 平成12年度版』(2000・労働調査会)』

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