甲佐(読み)こうさ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「甲佐」の意味・わかりやすい解説

甲佐(町)
こうさ

熊本県中部、上益城郡(かみましきぐん)にある町。1889年(明治22)町制施行。1955年(昭和30)宮内村、竜野(たつの)村、白旗(しらはた)村、乙女(おとめ)村と合併。東半は古生代中生代堆積(たいせき)岩からなる低山性の御船(みふね)山地、西半は緑川の形成した沖積低地と段丘礫(れき)層からなる台地。緑川が平地に流れ出る位置にある岩下地区は、いわゆる谷口集落で、明治10年代の初めにはすでに町場を形成していた。国道443号が縦断する。産業の中心は農業で、低地では水稲を基幹に花卉(かき)・野菜のハウス栽培が、台地では養蚕から転換したミカン栽培を基調に酪農も営まれている。製材など地元原料と結び付いた工業もあるが、その雇用力はなお弱く、小さい。山腹に無病息災の祈願場(福城寺)のある甲佐岳(753メートル)は、鍾乳洞(しょうにゅうどう)、カルスト地形なども伴っており、緑川を利用した簗(やな)とともに、代表的な観光資源となっている。面積57.93平方キロメートル、人口1万0132(2020)。

[山口守人]

『『甲佐町史』(1968・甲佐町)』


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改訂新版 世界大百科事典 「甲佐」の意味・わかりやすい解説

甲佐[町] (こうさ)

熊本県中央部,上益城(かみましき)郡の町。人口1万1181(2010)。緑川中流の甲佐盆地に位置し,北東部に甲佐岳がある。町名は阿蘇四社の一つとして知られた甲佐神社にちなむ。1607年(慶長12)に加藤清正が築造した鵜ノ瀬堰から取水する大井手用水が町を貫流し,灌漑用水,生活用水として利用されている。農業が主産業で米作,酪農,養蚕,果樹を組み合わせた複合経営を行う。従来からの製糸,製材などの工場に加えて,近年電線などの工場も誘致された。鵜ノ瀬堰の下手には寛永年間(1624-44)に藩主細川忠利のためにつくられたというアユのやな場がある。麻生原には樹齢700年といわれるキンモクセイ(天)がある。
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百科事典マイペディア 「甲佐」の意味・わかりやすい解説

甲佐[町]【こうさ】

熊本県中央部,上益城(かみましき)郡の町。緑川中流の甲佐盆地が中心で,盆地底には水田が開け,周辺部では花卉(かき),野菜,葉タバコの畑作,養蚕,酪農が行われる。製糸・製材工場があり,麻生原にはキンモクセイ(天然記念物)がある。57.93km2。1万1181人(2010)。

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世界大百科事典(旧版)内の甲佐の言及

【七城[町]】より

…中世に当地を支配した菊池氏の七つの外城跡があり,町名はそれに由来する。明治中期までは菊池川沿いの高島,甲佐は河港としてにぎわい,菊池米などが積み出された。主産業は農業で,すし米,酒造米に用いられる良質米のほか,プリンスメロン,スイカなどが栽培され,養豚も盛ん。…

※「甲佐」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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