日本大百科全書(ニッポニカ) 「甲状腺ホルモン剤」の意味・わかりやすい解説
甲状腺ホルモン剤
こうじょうせんほるもんざい
甲状腺ホルモンを含む薬剤の総称。甲状腺から分泌されるホルモンが甲状腺ホルモンで、チロキシン(レボチロキシンともいう)とトリヨードチロニン(リオチロニンともいう)の2種がある。甲状腺機能低下症、すなわち単純甲状腺腫(せんしゅ)、先天的な甲状腺ホルモン欠乏症であるクレチン症、後天的な欠乏症である粘液水腫の治療に用いられる。医薬品としては動物(ウシ、ブタ)の新鮮甲状腺を乾燥して製した乾燥甲状腺(「チレオイド」)、レボチロキシンナトリウム、リオチロニンナトリウム(「チロナミン」)の3種が市販されている。甲状腺ホルモンは生体の基礎代謝を亢進(こうしん)することから「やせぐすり」として用いられたことがあった。
甲状腺機能亢進症にはバセドウ病があり、この治療には甲状腺ホルモンの合成を抑制する作用をもつ抗甲状腺ホルモン剤が用いられる。抗甲状腺ホルモン剤にはメチルチオウラシル、プロピルチオウラシル(PTU)、メチマゾール(MMI)などがあり、副作用として無顆粒(かりゅう)球症、白血球減少症、血小板減少症などがある。とくにメチルチオウラシルは副作用が大きいため市販を中止された。
[幸保文治]