畜産技術の基礎となる学理を研究する諸学問を広く包括する総合学であって,農学の一分野である。古くは家畜の飼育は農民の経験をふまえた慣行により行われていたが,19世紀後半からは家畜頭数が増えて畜産が専業化するとともに,その事態に対応するための技術が要請されることとなり,畜産に関する学理が集積され体系化された。したがって畜産学を構成する学問としては,(1)基礎学としての家畜生物学(解剖学,生理学,遺伝学,栄養学,心理学,行動学,生態学など),(2)応用学としての家畜生産学(育種学,繁殖学,飼養学,管理学など),(3)畜産業の基盤としての飼料生産学(飼料学,飼料作物学,草地学など),(4)畜産物の保蔵・加工のための畜産物利用学(畜産物品質学,畜産物保蔵学,畜産物加工学など),(5)社会科学の面から畜産経営学,などの諸学が含まれている。なお畜産学と獣医学とは,ともに対象とする家畜に対する認識の重要性ということから基礎学の大きな部分を共有しているが,畜産学は健康な家畜の生産性をより向上させるという側面を受けもち,そのため畜産経営との強い関連を有するのに対し,獣医学は家畜の疾病の予防・治療を目的としており,公衆衛生をも対象とする点が相違している。
執筆者:正田 陽一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
畜産業の発達を背景として体系づけられた応用科学の一つ。19世紀後半に、全産業が自給体制から商品生産の段階へ移行するとき、畜産でも、旧来の農民の経験に基づく創意工夫による域を脱して、近代科学の導入が試みられた。それは、メンデルの法則の再発見に刺激された遺伝学を家畜の品種改良に応用した家畜育種学、物理・化学の発達に基礎を置いた家畜栄養・飼養学および畜産物加工・利用学などであった。これら諸科学によって畜産学としての体系が確立したのは1920年代である。現在、畜産学はこれらの自然科学の分野のみならず、畜産経営に関係のある諸学を包括した高度の複合科学としてとらえられている。
畜産学は、健康な家畜を対象とし、(1)家畜の生物学的な面を研究する家畜解剖学、家畜生理学、動物遺伝学、内分泌学、家畜生態学、家畜心理学、(2)以上の基礎学を応用して家畜の生産向上を図る家畜育種学、家畜繁殖学、家畜飼養学、家畜管理学、(3)家畜の飼料生産のための飼料学、飼料作物学、草地学、(4)家畜の生産物の加工・製造のための畜産物利用学、(5)畜産経営と畜産物の流通に関する畜産経営学、によって構成されている。
[西田恂子]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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