六訂版 家庭医学大全科 「症状別応急手当」の解説
救命・応急手当の基礎知識
症状別応急手当
(健康生活の基礎知識)
頭や胸などの痛みや嘔吐など、突然おこるさまざまな症状に対して、速やかに手当を行って症状の悪化や苦痛の軽減をはかり、命を守ることが大切です。原因となる病気などの解説は「症状からみた病気」や本論をみていただくとして、ここでは急を要する主な症状別に、その対処と手当のしかたをみていきます。
頭がとても痛い
・頭を動かさないようにして安静を保つ
・冷たいタオル、
・口のなかに何か入っていたら出させる
・励まして落ち着かせ、安心させる
・寒がるなら毛布などをかけ、暑がらない程度に保温する
・飲み物や食べ物は与えない
❸状態をよく観察する。
・秒単位で発症した(発症した時間が「○時○分○秒だった」といえるほど急激に発症した)頭痛
・今まで経験したことのない強い頭痛
・意識がおかしい
・吐き気・嘔吐がある
・麻痺
・けいれん
・呼吸の乱れ
・目の痛み、視界のぼやけ
・行動異常
・歩行障害
・失禁
・吐いた物が見えたら横向きに寝かせ、反応のある傷病者の場合では吐き出すように指示する。特別な異物の除去は行わない
❹意識がない、または非常に反応が鈍くなってきたら、心肺蘇生法を救急車が来るまで続ける。
呼吸がとても苦しい
❶いちばん楽な姿勢をとらせ、衣服をゆるめる。
・息苦しさが増すので、あお向けに寝かせないこと
・座ぶとんなどをあて、上半身を高くすると呼吸が楽になることがある
・寒くない程度に窓をあけ、換気をよくする
・口のなかに何か入っていたら出させる
❷背中を前に押す感じでさすりながら、落ち着かせる。
❸状態が落ち着いて呼吸が楽になったら早めに医師に連絡。
❹状態をよく観察。
・意識が混濁している
・脈が弱くなっている
・痛いところがある
・手足が冷たい
・顔色が青ざめている
・唇や手足が紫色になっている
・冷や汗をかいている
・息苦しそうな表情をしている
など、ひとつでもあれば、すぐに119番に通報する
❺意識がないか、または非常に反応が鈍くなってきたら、心肺蘇生法を救急車が来るまで続ける。
胸がとても痛い
❶すぐに119番に通報する。
❷意識の有無を調べる。
❸意識があるなら衣服をゆるめ、本人のいちばん楽な姿勢をとらせる。
・座位または半座位にして、座ぶとんや枕などを背中にあてがうと楽になる。呼吸が困難になるので、あお向けに寝かせない
・寒がるなら毛布などをかけ、暑過ぎない程度に保温する
・不安がらないように元気づけ、落ち着かせる。不安は発作を悪化させる
・食べ物や飲み物を与えない
・口のなかに何か入っていたら出させる
・吐きたいなら吐かせ、薄い塩水か水でうがいをさせる
❹意識がない、または非常に反応が鈍くなってきたら、心肺蘇生法を救急車が来るまで続ける。
おなかがとても痛い
❶膝を立てて、あお向けに寝かせる。
・低い枕をし、クッション、または座布団などを折ってあてがうと楽になる。これが苦しいなら、いちばん楽な姿勢をとらせる
・急におこる嘔吐が考えられるため、顔を横に向けておき、
・吐きたいなら吐かせ、薄い塩水か水でうがいをさせる
・水や食べ物を与えない
・浣腸は使わない
・痛みが治まったら、しばらく安静にして落ち着かせ、早めに受診する
❷状態をよく観察。
・激しい痛みが続く、または短時間でぶり返す
・吐いても痛みが治まらない
・おなかがふくれ上がる、または板のように堅くなる
・血便があり、右下腹部にしこりがある
・腟から出血している(女性)
・全身状態が悪化する(ショック症状)
→顔面蒼白、冷や汗、めまい、失神、息切れ、意識
❸意識がない、または反応が非常に鈍くなってきたら、心肺蘇生法を救急車が来るまで続ける。
けいれんをおこした
❶二次的なけが、やけどなどの事故を起こさないように、まわりにある危険物を取り除く。
※重要注意点
・ひきつけの最中に、いきなり抱いて動かさないこと
・無理に押さえつけない
・大声で呼んだり、ゆすったりしない
・水をかけたりしない
・無理に口をこじあけて、ハンカチやスプーンなどを入れない
❷衣服をゆるめ、顔を横向きにして寝かせる。
・部屋をやや暗くする
・熱があるなら、氷嚢や蓄冷剤などで冷やす
・吐いた物が見えたら、反応のある傷病者の場合は吐き出すように指示する。特別な異物の除去は行わない
❸けいれんが数分で治まったら、しばらく様子をみて、早めに病院へ。
❹状態をよく観察。
・5分以上、けいれんが続く
・短時間にけいれんを繰り返す
・熱がないのにけいれんしている
・体の片側が強くけいれんしている
・白眼をむいたり、眼つきがおかしい
・意識がない、朦朧としている
・治まったあとも意識が朦朧としている
・嘔吐を繰り返す、吐瀉物をつまらせる
・麻痺がある
など、ひとつでもあれば、すぐに119番に通報する
❺意識がない、または非常に反応が鈍くなってきたら、心肺蘇生法を救急車が来るまで続ける。
血を吐いた
血を吐く場合には、吐血と喀血があります。吐血は食道や胃・十二指腸などからの出血で、真っ赤または暗赤色、コーヒーかすのような色の血を吐きます。喀血は気管支や肺からの出血で、咳込みながらまっ赤な血を吐きます。
❶大量の出血なら、ただちに119番に通報する。
・少量でも、あとで大出血する怖れがあるので、すぐに医師へ連絡し指示をあおぐ
・トイレなどで吐いた時は、流さないようにする。救急隊員に出血の量を見てもらうと、医師の治療の参考になる
❷衣服をゆるめ、顔を横向きにして静かに寝かせる。
・出血に動揺せず落ち着いて手当する
・再び吐くことに備え、洗面器を用意しておく
❸背中をさすりながら、たまっている血を吐き出させる。
・喀血の場合はなるべく咳をさせ、吐き出させると呼吸が楽になる
・吐き終えたら、薄い塩水か水でうがいをさせる
・吐いた血を飲み込まないように呼吸を整えさせる
・再び血を吐かないように話をさせない
・吐いた物は、すみやかに片づけ、本人に見せないようにする。吐いた物は取
っておき、あとで医師に見せる
・汗が出ない程度に毛布などで保温する
・のどが渇くなら、氷の小片をガーゼに包んで含ませる
・医師の診断があるまで飲食は禁止、うがい程度にする
❹意識がない、または非常に反応が鈍くなってきたら、心肺蘇生法を救急車が来るまで続ける。
※感染予防のため、血液には直接触れないこと。できればゴム手袋やビニール手袋を使用する。
嘔吐した(吐いた)
❶背中をさすって、吐きたいだけ吐かせる。
・水や薄い塩水を飲ませると、吐くのが楽になる
・吐いた物は手早く片づけ、薄い塩水か水で口をよくすすがせる。吐いた物が周囲にあると、また吐き気を誘うので、注意する
・吐いた物は取っておき、あとで医師に見せる
❷衣服をゆるめ、吐瀉物で窒息しないよう、顔を横向きにして寝かせる。
・再び吐くことに備え、洗面器を用意しておく
❸嘔吐が治まったら思い当たる原因をたずね、少しでもおかしいと思ったら医師に連絡。
❹状態をよく観察。
・嘔吐が止まらない
・頭痛、めまいがある
・麻痺がある
・胸が痛い
・激しい腹痛が続く
・呼吸の状態がおかしい
・意識が混濁している
など、ひとつでもあれば、すぐに119番に通報する
❺意識がない、または非常に反応が鈍くなってきたら、心肺蘇生法を救急車が来るまで続ける。
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報