ウシ,ヤギ,ヒツジ,ウマなどの乳を原料とし,これに乳酸菌や酵母を培養して発酵させ,特有の風味を与えた乳製品。アルコール発酵乳と酸乳の2種類に大別できる。日本の規格では,これらの製品のうち無脂乳固形分8.0%以上,1ml当り菌数1000万以上のものを発酵乳という。
乳酸菌と乳糖発酵性酵母を用いて作られる発酵乳で,日本では製造されていない。次のような種類がある(1)ケフィア(ケフィール) カフカス地方で牛乳,やぎ乳,羊乳を原料として作られてきたが,最近は,牛乳や脱脂乳が用いられる。ケフィア粒と称する乳酸菌と酵母の菌体の塊を牛乳に加え,約15℃で1~3日間発酵させると,乳酸とアルコールを含み,わずかに泡立つ爽快な風味をもつ製品となる。ケフィア粒はろ過して取り分け,天日乾燥してふたたび使用できる。(2)クミズ 中央アジア,旧ソ連南部などで,馬乳を原料として作られる。馬乳はタンパク質が少なく乳糖が多いので,アルコール発酵に適している。原産地では馬乳を放置すれば自然発酵して良好なクミズができる。ケフィアに比べてアルコール含量が高い。(3)奶酒(ナイチユウ)(蒙古乳酒) ケフィア,クミズなどはアルコール含量が少なく,白色の粘性液体であるが,奶酒は一種の蒸留酒でアルコール分約9%と高く,透明である。原料は脱脂乳で,かめに入れて約20℃で5~10日間野生酵母で発酵させ,蒸留する。
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
牛乳、羊乳などの飲用乳またはその脱脂乳に乳酸菌を加え、乳中に含まれる乳糖を乳酸発酵させた乳製品。乳酸菌に酵母を併用するものもあり、その場合はわずかにアルコール発酵を伴う。乳は栄養に富む食品であって、有害細菌による腐敗がおこりやすい。一方、搾乳の環境では野生の乳酸菌や酵母が分布していて、搾乳後加熱殺菌をせずに放置しておくと、容易に乳酸発酵が行われて乳酸が生ずる。その結果、乳中のタンパク質が酸によって豆腐状に凝固(カード生成)し、同時に一般に酸に弱い有害細菌の繁殖を抑制し保存性がよくなる。したがって古来牧畜社会においては搾乳された乳をそのまま飲まずに、発酵乳の形にしてから飲用する例が多くみられる。モンゴルのエードスンスー、インドのダヒ、中近東諸国のラバン、トルコ・バルカン諸国のヨーグルト、北欧のフィルムヨルク、また酵母によってアルコール発酵を伴ったものではカフカスのケフィア、大陸内部のクミスなどはすべて発酵乳の一種である。日本では奈良朝のころから中国より伝わった「酪(らく)」がその一種と考えられ、宮廷貴族階級に用いられた記録がある。
現在わが国で流通している発酵乳は、ほとんどヨーグルトの製造方法によっているもので、形状としては、カード生成をさせただけのものに、カードをペースト状に砕いたもの、果汁果実などを加えたもの、糖類などを加えたもの、液状にしてそのまま飲用に供する形にしたもの、凍結してアイスクリーム状にしたものなど多種類にわたる。厚生省令「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令」では、乳またはこれと同等以上の無脂乳固形分(8.0%以上)を含むものを、乳酸菌または酵母で発酵させ、糊(のり)状、液状またはこれを凍結したもので、乳酸菌数または酵母数が1ミリリットル当り1000万個以上を含むものを、「はっ酵乳」と定義している。
[新沼杏二・和仁皓明]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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