発音魚(読み)はつおんぎょ(英語表記)sound-producing fish

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

発音魚
はつおんぎょ
sound-producing fish

魚類のうち、歯や骨、ひれの棘(とげ)などをすり合わせた摩擦音、摩擦音をうきぶくろで共鳴させた共鳴音、筋肉やうきぶくろの壁を激しく振動させた特有な振動音を出す魚をいう。発音魚は、この音で警戒、威嚇、縄張り(テリトリー)宣言、雌雄の交信などをする。水は音を伝えやすく、海水中では毎秒1540メートル近くの速度で四方に広がるので、発音による交信の効果は非常に大きい。
(1)摩擦音 歯や骨、ひれの棘などの摩擦音は高く、その周波数は100~8000ヘルツにわたり、普通1000~4000ヘルツである。カワハギ、フグ、およびいろいろのスズキ目魚類は上下のあごの歯をすり合わせて鋭い音を出す。ゴンズイ、ギギなどは胸びれの棘で、その基部の関節面を摩擦して特有な音を出す。ヒイラギは前上顎骨(ぜんじょうがくこつ)と頭骨をすり合わせて発音する。
(2)共鳴音 うきぶくろは、ほかの器官から出された音の共鳴や増幅に役だてられている。モンガラカワハギは胸びれと皮膚を摩擦して音を出すが、摩擦する皮膚の下にうきぶくろの一部が伸び出ていて、摩擦音に共鳴する仕組みになっている。また、モンガラカワハギのほかの1種では歯の摩擦音、擬鎖骨の摩擦音、胸びれで皮膚をたたく音がうきぶくろに共鳴する複雑な発音の仕組みをもっている。ある種のスズキ類は鰓蓋(さいがい)で肩帯をたたき、カラシン、ウナギ、ナマズなどは気道を通じてガスを水中に送り出すときに発音し、これがうきぶくろによって増幅されて大きく聞こえる。
(3)振動音 うきぶくろは、付着した特別な筋肉(鼓筋(こきん)またはドラミング筋)が急に収縮・伸長するとき、40~250ヘルツ、普通75~100ヘルツの低周波のリズミカルな音を出す。鼓筋は、ナマズ類では背骨の突起に挟まり、シマイサキ、カサゴ、カクレウオでは頭骨からうきぶくろにかけて、イットウダイやイタチウオでは頭骨からうきぶくろに付着する肋骨(ろっこつ)にかけて、ニベ・グチ類、ソコダラ類ではうきぶくろの外側に、カナガシラ、マトウダイなどはうきぶくろの壁の内側にある。カサゴのうきぶくろの内部は薄い隔膜で仕切られた2室に分かれ、隔膜には小さい穴がある。鼓筋が急激に収縮すると後室のガスが前室に流れ込み、そのときに隔膜が振動して発音するという変わった仕組みをもっている。
 鼓筋は雌雄または季節によって大きさが異なり、雄で大きく、また繁殖期に大きくなる傾向がある。大西洋のタラ科のハドックでは雄の鼓筋は雌の数倍もあり、産卵期の5、6月に最大となる。この雄は低音を出して雌を集め、そのなかから1尾を選んで産卵させる。これらの魚の成熟した雌は、雄からの音を聞くと興奮する。ニベ科のニベ・グチ類では、繁殖期に多数の個体が同時に発音するので魚群の探知が容易となる。[落合 明・尼岡邦夫]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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