日本大百科全書(ニッポニカ) 「白蛇伝」の意味・わかりやすい解説
白蛇伝
はくじゃでん
中国の民間伝説。西湖の白蛇と青魚の精が白素貞(はくそてい)(一名白娘(はくじょう))、青々(一名青児(せいじ))の二美人に変身、白素貞は清明節のころ、若者許宣(一名許仙)を見そめ、人間界に暮らしたくて、妖術(ようじゅつ)で官庁の銀を盗み許宣に与えたため、許仙は捕らえられるなど苦労するが、因縁絶ちがたく夫婦となる。しかし妻が大蛇であると知り、法海和尚(おしょう)に助けを求め、和尚は法力で二女を鉢の中に捕らえ雷峰寺に埋め、雷峰塔を築いて封じた。
古くから語物や小説『西湖三塔記』(清平山堂話本)、『白娘子永鎮雷峰塔』(警世通言)に扱われ、明(みん)代の陳六竜(ちんりくりょう)が雷峰の故事を芝居で演じたという記録もある。清(しん)の雍正(ようせい)・乾隆(けんりゅう)(1723~95)のころ、黄図(こうとひつ)が戯曲『雷峰塔伝奇』を書き、蘇州(そしゅう)や杭州(こうしゅう)などで上演された。戯曲では白娘の妖気が減り、許仙にも白娘に対する愛の深まりがみられる。1952年北京(ペキン)で白蛇伝の研究討論が行われ、53年戴不凡(たいふぼん)が「試論白蛇伝故事」を発表して以来、白娘は怜悧(れいり)かつ勇敢で封建的社会に抵抗し自由な婚姻を求める女性、青々は白娘に友情を尽くす聡明(そうめい)な娘、法海和尚は封建勢力の化身として解釈されている。京劇や地方劇でよく上演され、近年北京京劇団日本公演にも田漢の脚本で上演された。
[平松圭子]
『波多野太郎著『中国文学史研究』(1964・桜楓社)』▽『『青木正児全集3 支那近世戯曲史』(1962・春秋社)』