白鳥の歌(読み)ハクチョウノウタ

デジタル大辞泉 「白鳥の歌」の意味・読み・例文・類語

はくちょう‐の‐うた〔ハクテウ‐〕【白鳥の歌】

死ぬまぎわに白鳥がうたうという歌。その時の声が最も美しいという言い伝えから、ある人が最後に作った詩歌や曲、また、生前最後の演奏など。
原題、〈ドイツSchwanengesangシューベルト歌曲集。1828年の作で、遺作ハイネらの歌詞による14曲からなる。本作と「冬の旅」「美しき水車小屋の娘」はシューベルト三大歌曲集とよばれる。

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精選版 日本国語大辞典 「白鳥の歌」の意味・読み・例文・類語

はくちょう【白鳥】 の 歌(うた)

  1. [ 一 ] 死に瀕した白鳥がうたうという歌。その時、もっとも美しくうたうと古来伝えられる。転じて、ある人の最後につくった詩歌、歌曲など。また、俗語で、過ぎ去った昔の幸福などを詠嘆的に追憶することにも用いた。〔モダン辞典(1930)〕
  2. [ 二 ]白鳥の歌

はくちょうのうたハクテウ‥【白鳥の歌】

  1. ( 原題[ドイツ語] Schwanengesang ) 歌曲集。シューベルト作曲。一八二八年作。シューベルトの最後の歌曲集で、ハイネらの詩によった一四曲よりなる。死後、出版される時にこの題名がつけられた。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「白鳥の歌」の意味・わかりやすい解説

白鳥の歌
はくちょうのうた
Schwanengesang

『美しい水車屋の娘』『冬の旅』と並ぶシューベルト三大歌曲集の一つ。ただし、前二者が内容に一貫性をもった連作歌曲集であるのに対し、この歌曲集は1828年、すなわち生涯の最後の年にシューベルトが作曲した14の歌曲(レルシュタープの詩によるもの七曲、ハイネ六曲、ザイドル一曲)を、彼の死後ウィーンの出版者ハスリンガーがまとめて公にしたものである。したがってシューベルト自身が編纂(へんさん)した歌曲集ではなく、また『白鳥の歌』(「告別の歌」の意)も出版者があとからつけた題名である。曲集としての一貫性には欠けるものの、個々の歌曲にはシューベルト晩年の精神の諸相を明確に映し出している名作が多い。レルシュタープの詩による有名な「セレナーデStändchenや、ザイドルの詩による「鳩(はと)の使い」Die Taubenpostのように叙情的な旋律を中心にした曲もあれば、またハイネの詩による「影法師」Der Doppelgängerのように、朗読風の歌と独特の和声法によって、歌詞の心理的な面を深く掘り下げた作品もある。とりわけ、シューベルトが死の年に初めて出会ったハイネの詩は、「都会」Die Stadtのピアノ前奏にみられるように、彼を触発して歌曲表現に新しい地平を開かせている。

[三宅幸夫]

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改訂新版 世界大百科事典 「白鳥の歌」の意味・わかりやすい解説

白鳥の歌 (はくちょうのうた)
Schwanengesang

F.シューベルトの晩年の遺作を集めて,1829年ウィーンの出版社ハスリンガーが歌曲集として出版したもの。

 H.F.L.レルシュタープの詩による7曲,ハイネの詩による6曲に,J.G.ザイドルの詩による《鳩の郵便Die Taubenpost》を加えた14曲からなる。最初の13曲については,シューベルト自身も連作歌曲集を意図していた。壮絶な第13曲《影法師Der Doppelgänger》は,その独自の抒情詩的劇唱によって特に有名である。
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百科事典マイペディア 「白鳥の歌」の意味・わかりやすい解説

白鳥の歌【はくちょうのうた】

シューベルトの14曲からなる歌曲集《Schwanengesang》。いずれも死の年(1828年)に書かれたものをウィーンの出版社がまとめたもので(出版1829年),特に第4曲《セレナード》は有名。《冬の旅》のような曲集としての統一感はないが,ハイネによる作品はいずれも名作として知られる。なお,白鳥は死に臨んで美しい声で鳴くといわれ,〈白鳥の歌〉は〈遺作〉の意。→美しき水車小屋の娘

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デジタル大辞泉プラス 「白鳥の歌」の解説

白鳥の歌〔曲名〕

オーストリアの作曲家フランツ・シューベルトの歌曲集D957(1828)。原題《Schwanengesang》。全14曲。『美しき水車小屋の娘』、『冬の旅』とともにシューベルト三大歌曲集の一つとして知られる。彼の死後、遺作として編纂されたもの。ハイネ、レルシュターブらの詩に基づく。

白鳥の歌〔小説〕

英国の作家エドマンド・クリスピンのミステリー(1977)。原題《Swan Song》。「ジャーヴァス・フェン教授」シリーズ。

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世界大百科事典(旧版)内の白鳥の歌の言及

【ハクチョウ(白鳥)】より

…ワーグナーの楽劇《ローエングリン》は〈白鳥の騎士〉の伝説を扱ったものでとくに有名である。なお,白鳥は臨終の際,妙なる声で歌うという伝説があり,〈白鳥の歌swan song〉の語が,辞世とか芸術家の最後の作品の意でも用いられる。【谷口 幸男】。…

【ペスタロッチ】より

…1805年にはイベルドンに新学校を設立し,数年間は全ヨーロッパの教育のメッカとして発展させ,プロイセンをはじめとする諸外国からも有為の青年教師たちが派遣されたが,ペスタロッチの指導力の欠如と協力者たちの不和・分裂のためしだいに衰退していった。25年,彼はこの学園を去って再びノイホーフに戻り隠棲したが,同年生涯の総括として自伝的著作《白鳥の歌Schwanengesang》を公刊した。そのなかで人間の諸能力と人格の調和的発達の重要性を強調し,そのかなめとしての道徳性の発達を重視する視点から〈生活が陶冶する〉という原理を主張した。…

※「白鳥の歌」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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