家庭医学館 「眼内レンズのしくみ」の解説
がんないれんずじんこうすいしょうたいのしくみ【眼内レンズ(人工水晶体)のしくみ】
水晶体は、セロファンのような薄い透明なカプセルに包まれた組織で、白内障では、その中身である水晶体皮質(すいしょうたいひしつ)や核が濁ります。
10年くらい前までの白内障手術の際には、水晶体をこのカプセルごとすべて取り出していました。目のレンズである水晶体を取り除いた後は、この水晶体の機能を補うために、分厚いレンズをつけためがねを装用するのがふつうでした。ところが、この方法では、手術する前と比べ、ものが実際より大きく見えたり、遠近感も変わったりして、見え方がやや不自然なものでした。
現在は、濁った水晶体の中身だけを取り除き、水晶体カプセルは一部を除いて残しておきます。そしてこのカプセルの中に挿入され、本来の水晶体の代わりをするのが眼内レンズ(人工水晶体)です。
●眼内レンズとは
眼内レンズは、人工水晶体とも呼ばれます。眼内レンズが移植されると、白内障になる前とほとんど同じに見られるようになります。
以前は、若年者や他の眼疾患のある人には挿入されませんでしたが、その安全性や利便性が確認され、最近の白内障手術では一部の例外を除き、ほとんどの場合、眼内レンズ挿入が同時に行なわれるようになりました。
●眼内レンズの材質と特徴
ポリメチルメタアクリレートというプラスチック性のものが主流でしたが、近年はシリコンなどやわらかい素材が使用されるようになっています。
やわらかな素材のものは、眼内に挿入する際に折りたたんで入れることができるため、手術の創口も小さいものですみます。
形としては直径約6mmの円形のものが主流で、これに支持部と呼ばれる部分(脚(あし))が2本ついています。この脚を水晶体の嚢(のう)に入れ、レンズを固定するのです。
眼内レンズもレンズですから、挿入にあたっては、手術前の検査によってそれぞれの患者さんに合った度数のレンズが処方されます。
◎眼内レンズのすぐれた性能と利便性
自然な見え方を得られることが眼内レンズの最大の長所ですが、さらに、コンタクトレンズのような日常の手入れの必要がないことも利点です。通常は数十年以上品質が維持され、将来劣化して入れ替えが必要ということもなく、たいへん便利なものです。
最近は、眼内レンズもさまざまな機能を備えたものが開発され、実用化されています。たとえば、ある程度遠近両方が見えるものや、自然な色に近い見え方が得られるものなどです。どのレンズがよいかは患者さんによって異なるので、主治医の先生とよく相談して決めるのがよいでしょう。