眼内レンズ(読み)ガンナイレンズ(英語表記)intraocular lens

翻訳|intraocular lens

デジタル大辞泉 「眼内レンズ」の意味・読み・例文・類語

がんない‐レンズ【眼内レンズ】

白内障の治療で用いられる凸レンズ。手術で濁った水晶体を除去し、その代わりに水晶体嚢に挿入する方法が知られる。かつてはハードコンタクトレンズと同じポリメチルメタクリレートPMMA)が用いられたが、やわらかいアクリル樹脂のレンズを折りたたんで挿入し、眼内で開かせる治療法が広く行われている。人工水晶体IOL(intraocular lens)。
有水晶体眼内レンズ

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「眼内レンズ」の意味・わかりやすい解説

眼内レンズ
がんないれんず
intraocular lens

白内障により混濁した水晶体の摘出術後に代用として挿入する人工のレンズ。略称IOL。人工水晶体ともいう。水晶体摘出後、眼内レンズを挿入することにより光の屈折力を確保し視力を補正する。この方法では、より生理的状態に近い屈折力が得られる。眼内に直接埋め込まれ、虹彩(こうさい)の前に挿入する前房レンズと後方に挿入する後房レンズのほか、虹彩支持レンズなどがあるが、現在では後房レンズがおもに選択される。水晶体は水晶体嚢(のう)とよばれる薄膜に包まれているが、老人性白内障の手術において、水晶体嚢外摘出術などを行って水晶体嚢を残し、嚢内に後房レンズを移植する方法がよく用いられる。

 眼内レンズは、光学部と支持部からなる。光学部の素材は、当初はポリメチルメタクリレートであったが、その後の改良シリコンやアクリル、コンタクトレンズに用いられるポリヘマなど、切開による侵襲の少ない素材が採用されるようになった。光学部以外の支持ループ部にはポリプロピレンなどが用いられる。また、光学部と支持部が一体となっているものもある。眼内レンズの多くは単焦点レンズで、手術前にどこに焦点をあわせるかを決める必要があるが、近年では、遠近両用の多焦点眼内レンズも開発されている。

[編集部]

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六訂版 家庭医学大全科 「眼内レンズ」の解説

眼内レンズ
(眼の病気)

 人工水晶体ともいわれ、現在、ほとんどの白内障手術でこの眼内レンズが挿入されています。手術で水晶体という(とつ)レンズを取ってしまうので、代わりの凸レンズが必要になり、眼内レンズができる前は、手術後は分厚い眼鏡やコンタクトレンズで視力矯正をしていました。

 眼内レンズは体のなかに長期間入れておくので、体が異物と認識しない材質で、かつ前房水(ぜんぼうすい)という眼内の水の比重に近いものが考えられてきました。いろいろな段階をへて、ハードコンタクトレンズと同じ素材のポリメチルメタクリレートや、最近ではアクリルなどの材質で、折りたたんで入れて眼内で開くフォールダブルレンズが主流となっています。折りたたむことによって、手術の傷口を約半分に縮小できました。最近は適応範囲も広がり、赤ちゃんの白内障手術時にも挿入しています。いったん入れた眼内レンズは、普通取り出すことはありません。

 眼内レンズは視力を改善し、出し入れの必要がなく便利なものですが、老眼をなくすことはできません。ヒトの眼は若いころはいろいろな距離のものが、どれもはっきり見えます。これは、水晶体が軟らかくて厚み直径を自由に変えられるため、見たいと思う距離に水晶体の焦点距離を合わせられるからです。加齢に伴い、水晶体の中央に徐々に芯ができてきます。その芯の部分は硬く、芯が大きくなるにつれ、水晶体はふくらまなくなっていきます。ふくらむと近くが見えるので、近くにピントが合いにくくなります。これが老眼です。

 眼内レンズは固体なので、厚さは変わりません。このため老眼と同じ状態になります。いくつかの距離でピントが合うように工夫された眼内レンズもつくられており、今後の進化が期待されています。

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百科事典マイペディア 「眼内レンズ」の意味・わかりやすい解説

眼内レンズ【がんないレンズ】

白内障になると,カメラでいえばレンズの役割をしている水晶体がにごってくる。このため,白内障の手術では,水晶体の袋にあたる部分を残して中身を吸い出し,代わりに人工水晶体をはめ込む。これを眼内レンズという。 これまでに多くの種類が開発されている。現在では,手術による角膜の開口部を3mm程度におさえるため,二つ折りで挿入できるやわらかいアクリル樹脂のレンズもある。 白内障の治療は,初期段階では点眼薬や内服薬で進行を少しでも遅らせるようにするが,根治治療法は手術しかない。また,白内障は60代の60%,70代の80%にみられるほど一般的な病気で,手術に健康保険が適用されたこともあり,手術を受ける人は増えている。入院を含む手術費用の合計は約30万円で,健保本人の2割負担なら自己負担は6万円ほど。なお,ごくまれだが手術による感染症や,角膜がにごる後遺症がでることもある。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「眼内レンズ」の意味・わかりやすい解説

眼内レンズ
がんないレンズ

白内障の治療に用いられる人工の水晶体。合成樹脂製のレンズで,水晶体を摘出したあとに眼内に直接埋込まれる。従来は眼鏡やコンタクトレンズを用いて視力矯正を行うが,これらに比べ眼内レンズは使用上のわずらわしさや異物感がなく,屈折率の差による物の歪みも少い。老人性白内障の治療に効果的で,手術の方式やレンズの材質にも改良が進んでいること,健康保険が適用されるようになったことなどから,利用者の増加が予想されている。

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世界大百科事典(旧版)内の眼内レンズの言及

【白内障】より

…しかし,片目だけ無水晶体の場合,眼鏡の装用は不可能に近く,コンタクトレンズが従来よく使われてきた。しかし,最近,水晶体を摘出後に,凸レンズの機能を有する人工水晶体(眼内レンズ)の挿入も行われるようになってきている。【南波 久斌】
【疾病史】
 白内障は太古から失明の最大の原因の一つであったと考えられる。…

※「眼内レンズ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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