睡眠病(読み)スイミンビョウ(その他表記)sleeping disease

デジタル大辞泉 「睡眠病」の意味・読み・例文・類語

すいみん‐びょう〔‐ビヤウ〕【睡眠病】

アフリカ西部および中部にみられる感染症トリパノソーマという鞭毛虫べんもうちゅうツェツェバエなどに媒介されて血液中に寄生することによって起こる。感染後数か月から数年昏睡に陥って死亡する。ねむり病。アフリカ睡眠病

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精選版 日本国語大辞典 「睡眠病」の意味・読み・例文・類語

すいみん‐びょう‥ビャウ【睡眠病】

  1. 〘 名詞 〙
  2. ある病気が原因で、絶えず眠りを催す症状。
    1. [初出の実例]「権中納言従三位中宮権大夫藤忠宗薨〈年七〉〈略〉年来睡眠病也、睡眠病人二人已夭亡、故按察中納言顕隆卿与此中納言也、尤可恐病也」(出典:中右記‐長承二年(1133)九月二日)
  3. アフリカの西部および中部だけにある伝染病病原体はトリパノソーマという鞭毛虫で、感染は特定の刺蠅(ツェツェバエなど)による。重い神経症状を呈し、嗜眠、昏睡に陥って死亡する。

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改訂新版 世界大百科事典 「睡眠病」の意味・わかりやすい解説

睡眠病 (すいみんびょう)
sleeping disease

アフリカトリパノソーマ症African trypanosomiasisともいわれる。アフリカトリパノソーマTrypanosoma bruceiという鞭毛虫が,ツェツェバエの刺咬により,ヒトに侵入することにより発症する。種々の節足動物により機械的に宿主間に伝播されることもある。トリパノソーマは多形態を示す原虫の一種である。アフリカトリパノソーマは,アフリカ大陸に分布し,ガンビアまたは中央・西アフリカ型と,ローデシアまたは東アフリカ型がある。侵入部位で増殖し,2~3日後局所に硬結を生じ,局所リンパ節腫張を伴い,次いで血流に入り,抗体ができると消失するが,抗原変異により新たな侵入をくりかえし,やがて中枢神経系に集合する。本格的発症の際の潜伏期は約2週間であるが,ときに年余に及ぶ。初めの症状は,発熱,頭痛,不眠紅斑,硬結などで,脾腫がみられる。これらの症状は,数ヵ月~数年の間隔で出没するが,やがて,脳脊髄膜炎となり,急激に痙攣けいれん)・昏睡に陥ったり,徐々に進行し,傾眠,昏睡といった,典型的な睡眠病症状となり,ついに多くは合併感染症により死亡する。貧血と高マクログロブリン血症,血沈亢進を伴い,血清・髄液中に特徴的に免疫グロブリンM(IgM)が多量に存在する。診断は,リンパ節より吸引した試料や髄液の染色標本から,原虫を見つけることによって行うが,血清学的反応も行われる。治療としては,スラミン,ペンタミジン,メラルゾプロールなどの投与が,病期に応じて用いられるが,副作用が多く,無効である場合や再発することもある。治療しない場合はほとんど致死的である。予防はハエの刺咬を防御することである。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「睡眠病」の意味・わかりやすい解説

睡眠病
すいみんびょう

住血鞭毛(べんもう)虫類に属するトリパノソーマ・ガンビエンスTrypanosoma gambienseと、トリパノソーマ・ローデシエンスT. rhodesienseによっておこる急性または慢性の原虫感染症で、慢性型では中枢神経系が侵され昏睡(こんすい)から死に至るために睡眠病とよばれる。ツェツェバエの1種であるサシバエに吸血されて感染する。睡眠病の分布はアフリカ大陸のツェツェバエが生息する北緯20度から南緯20度までの赤道中心地域に限定されているため、アフリカ睡眠病ともよばれる。潜伏期は一般に10日~3週間であるが、臨床症状の発現には2~5年もかかる場合がある。症状は1期と2期に分かれ、第1期では発熱やリンパ節腫脹(しゅちょう)を特徴とし、第2期では中枢神経系が侵されて髄膜炎や脳炎の症状がみられ、重症では昏睡から死に至る。

 治療としては初期にスラミン、ペンタミジンなど、進行例にはトリパルサミド、メラルソプロールなどのヒ素剤やニトロフラゾンなどが有効である。

[松本慶蔵・山本真志]

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世界大百科事典(旧版)内の睡眠病の言及

【トリパノソーマ】より

…トリパノソーマには多数の種類があるが,ヒトの血液や組織に寄生して病原性をもつものは数種である。トリパノソーマ・ガンビエンセT.gambienseおよびトリパノソーマ・ローデシエンセT.rhodesienseは,アフリカ睡眠病の病原体である。アフリカ睡眠病はツェツェバエによって媒介され,トリパノソーマ感染動物(ライオン,ハイエナ,ウシなど)をツェツェバエが吸血してトリパノソーマを取り込み,次いでヒトを感染させる。…

※「睡眠病」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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