古代武器の一種。「弩」の字を「いしゆみ」と読ませることがあるが、大矢を発する「弩」=機弓と、石を放つ「石弓」=抛石いわゆる「いしはじき」とは趣(おもむき)を異にする。「石弓」の実態についてはよくわからないが、『和名抄(わみょうしょう)』に「建大木置石其上発機以投敵也」、『義解』には「抛」とは「擲」の意で、「機械を作りて石を抛(なげう)って敵をうつもの也(なり)」とある。これらの記録から想像すると、弾力ある木を立てその反発力を利用し石をはじく方法や、固定された弓の反発力により石をはじく方法がとられたと考えられる。
また『奥羽後三年記』に「遠きものをば矢を以(も)ってこれを射、近きものを石弓をはっして是(これ)をうつ」、『源平盛衰記』に「大石を竝(ならべ)て石弓を張る」、『結城(ゆうき)戦場物語』に「石弓筒木の綱を切って落す」などともあり、これらの資料から考えると、城壁山崖(さんがい)などに石棚をつくり、これに石を積み、敵が接近するとこれを落とす方法が行われたらしい。
一方「弩」は、台に取り付けた強力な短弓の弦を台の鉤(かぎ)にかけ、引き金によりこれを外し、つがえた矢を発するもので、古代中国、朝鮮では盛んに用いられ、ヨーロッパでも戦闘によく使用された。日本の「弩」に関しては推古(すいこ)天皇26年(618)に高麗(こま)(高句麗(こうくり))より伝えられた記録があり、古代実戦に使用されていたことが古い記録にみられる。これまで日本ではこの弩の出土品はなかったが、1999年(平成11)に初めて出雲(いずも)市の遺跡から発掘された。
[入江康平]
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