石弓(読み)イシユミ

デジタル大辞泉 「石弓」の意味・読み・例文・類語

いし‐ゆみ【石弓/×弩】

古代武器の一。
㋐木などの弾力を利用して石をはじくようにした武器。いしはじき。
ばね仕掛けで大矢を発射する大型の弓。弩弓
城壁・がけの上に石をくくりつけておき、その綱を切り、石を落として敵を圧殺する仕掛け。いしおとし。
「岡には大石を並べて―をはる」〈盛衰記・九〉
ぱちんこ1」に同じ。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「石弓」の意味・読み・例文・類語

いし‐ゆみ【石弓・弩】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 中国古代の武器で、手で引いて射る弓に対し、一種の機械仕掛けの弓。ばねを使って矢や石などを発射し、遠距離を攻撃する大型のはじき弓。弩(ど)。おおゆみ。
    1. 石弓<b>①</b>〈海国兵談〉
      石弓海国兵談
    2. [初出の実例]「矢狭間(やざま)にいしゆみすきまなく」(出典:浄瑠璃・国性爺合戦(1715)三)
  3. 城壁やがけの上に石をくくりつけておき、敵の近づくのを待って綱を切り、石を落として敵を圧殺する装置。いしはじき。
    1. [初出の実例]「城の内より石弓はづしかけたりければ、大衆官軍かずをつくいてうたれにけり」(出典:平家物語(13C前)二)
  4. 股状の小枝にゴム紐を張り、小石をはじき飛ばして小鳥などをとる道具。ぱちんこ。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

日本大百科全書(ニッポニカ) 「石弓」の意味・わかりやすい解説

石弓
いしゆみ

古代武器の一種。「弩」の字を「いしゆみ」と読ませることがあるが、大矢を発する「弩」=機弓と、石を放つ「石弓」=抛石いわゆる「いしはじき」とは趣(おもむき)を異にする。「石弓」の実態についてはよくわからないが、『和名抄(わみょうしょう)』に「建大木置石其上発機以投敵也」、『義解』には「抛」とは「擲」の意で、「機械を作りて石を抛(なげう)って敵をうつもの也(なり)」とある。これらの記録から想像すると、弾力ある木を立てその反発力を利用し石をはじく方法や、固定された弓の反発力により石をはじく方法がとられたと考えられる。

 また『奥羽後三年記』に「遠きものをば矢を以(も)ってこれを射、近きものを石弓をはっして是(これ)をうつ」、『源平盛衰記』に「大石を竝(ならべ)て石弓を張る」、『結城(ゆうき)戦場物語』に「石弓筒木の綱を切って落す」などともあり、これらの資料から考えると、城壁山崖(さんがい)などに石棚をつくり、これに石を積み、敵が接近するとこれを落とす方法が行われたらしい。

 一方「弩」は、台に取り付けた強力な短弓の弦を台の鉤(かぎ)にかけ、引き金によりこれを外し、つがえた矢を発するもので、古代中国、朝鮮では盛んに用いられ、ヨーロッパでも戦闘によく使用された。日本の「弩」に関しては推古(すいこ)天皇26年(618)に高麗(こま)(高句麗(こうくり))より伝えられた記録があり、古代実戦に使用されていたことが古い記録にみられる。これまで日本ではこの弩の出土品はなかったが、1999年(平成11)に初めて出雲(いずも)市の遺跡から発掘された。

[入江康平]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

今日のキーワード

プラチナキャリア

年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...

プラチナキャリアの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android