石芋(読み)イシイモ

精選版 日本国語大辞典 「石芋」の意味・読み・例文・類語

いし‐いも【石芋】

  1. 〘 名詞 〙
  2. かたくて食べられない芋。その由来を説明する伝説は、全国に広く分布している。多くは弘法伝説に結びつき、旅の大師が芋を乞うたが石芋だといって与えなかったため、その地の芋は今も固くて食えないという。
    1. [初出の実例]「石芋は今に大師の置土産」(出典:雑俳・雲鼓評万句合‐寛延二(1749)二)
  3. 植物くわずいも(不食芋)」の異名。〔多聞院日記‐天正一〇年(1582)一〇月八日〕
  4. 植物「オランダかいう(━海芋)」の異名。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「石芋」の意味・わかりやすい解説

石芋
いしいも

自然伝説の一つ。「食わず芋」「大師芋」ともいう。固くて食べられない芋の由来を説明する伝説。ある高僧(その半数以上が弘法(こうぼう)大師)の巡錫(じゅんしゃく)の途中に、空腹のために芋を所望し、もらえなかったため(恵まれたため)に、その地の芋(ほかの救荒食物も同じ)は煮ても焼いても食べられない(不自由することがない)、という型は、全国に共通している。芋のかわりに蕨(わらび)、菜などがあるほかに、杖(つえ)を挿して根づかせて二度三度実らす(たとえば、弘法栗(ぐり)、三度栗、不喰梨(くわずなし)、半渋柿、弘法柿、石胡桃(くるみ)、莢(さや)ばかりの大豆など)も型は同じ。またこの型は、弘法が水をもらえなかった(恵まれた)ために罰があたって(恩恵によって)泉がない(よい水が湧(わ)く)、という弘法清水(しみず)と同型である。親切な村人と意地悪なそれとの結果の対比は、昔話「隣の爺(じい)」型と同じで、勧善懲悪を説く文芸的意匠が、異郷人歓待の信仰を変化せしめたものである。救荒食物や自然湧出(ゆうしゅつ)水の恩恵者として弘法がもっとも幅をきかしているのは、中世中末期以降に弘法をかたって全国を歩いた高野聖(こうやひじり)の影響や、それに伴う大師信仰習俗によるものである。

[渡邊昭五]

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