日本大百科全書(ニッポニカ) 「磁苦土鉄鉱」の意味・わかりやすい解説
磁苦土鉄鉱
じくどてっこう
magnesioferrite
酸化鉱物の一つ。磁鉄鉱の二価鉄(Fe2+)のマグネシウム(Mg)置換体。広義の尖晶石(せんしょうせき)(スピネル)族の一員。磁鉄鉱系。自形は正八面体。磁鉄鉱より形態上の変化は少ない。アルカリ火山岩中や同様の岩質のマグマの活動する火山の噴気生成物として産し、比較的高温生成の苦灰岩(くかいがん)起源のスカルン中にも産する。キンバレー岩中の磁性成分をなすことがある。ある種のカーボナタイトの少量成分をなす。アルカリ斑糲岩(はんれいがん)中に含まれる。また、ある種の超塩基性岩に少量含まれる。塩基性岩起源で比較的高変成度の広域変成岩中に産する。日本では福島県石川郡石川町沢井の超塩基性岩中に産する。
共存鉱物は沢井では苦土橄欖石(くどかんらんせき)、蛇紋石、透閃石(とうせんせき)、方解石など。同定は磁鉄鉱との区別がしがたいが、磁鉄鉱よりやや硬度が高く、比重が小さいことによる。磁性は磁鉄鉱より強く感じられる。命名は磁性の存在と主成分としてのマグネシウムの存在による。
[加藤 昭 2017年5月19日]