改訂新版 世界大百科事典 「角セン石」の意味・わかりやすい解説
角セン(閃)石 (かくせんせき)
amphibole
CaやMg,FeおよびAlやNa,Kなどをさまざまな割合で含む一群の含水ケイ酸塩鉱物の総称。角セン石に属する鉱物群を角セン石族と呼ぶ。角セン石は輝石とともに化学組成の変化する範囲が最も広い鉱物の一つである。一般に角セン石族の化学組成はW0~1X2Y5Z8O22(OH)2と表される。WにはNaとKが,XにはNa,CaやMg,Fe2⁺,Mn2⁺などの金属イオンが,YにはMg,Fe2⁺,Fe3⁺,Al,Tiなどのイオンが,ZにはSi,Al,Tiイオンが入る。OH基の代りに少量のFやClイオンを含む角セン石もある。角セン石は一般に化学組成のXに何が入るかによって次の三つのグループに分けられる。(1)XにMgとFeが入り,Caをほとんど含まない直セン石-カミングトンセン石グループ,(2)XにCaが入るカルシウム角セン石グループ,(3)XにNaが入るアルカリ角セン石グループ。
(1)には直セン石やカミングトンセン石などが属している。角セン岩などの変成岩に少量出現する。
(2)は角セン石族のうち最も多様な化学組成をもつグループである。NaとAlをほとんど含まないアクチノセン石,NaCa2(Mg,Fe2⁺)3Al5Si5O22(OH)2を基本的な化学組成とし,Mg,Fe2⁺の一部をMnで,Alの一部をMg,Fe2⁺,Fe3⁺などで置き換えるパーガスセン石pargasite,Ca2(Mg,Fe2⁺)3Al4Si6O22(OH)2を基本的な化学組成とし,パーガスセン石と同じように一部を他のイオンと置換するツェルマクセン石tschermakite,NaCa2(Mg,Fe2⁺)5AlSi7O22(OH)2という化学組成をもつエデンセン石edeniteとそれらの中間的な化学組成であるホルンブレンドhornblendeは代表的なものである。ふつう濃緑色~濃褐色で長柱状~繊維状の集合体として産出する。カルシウム角セン石は斜長石や石英,輝石などとともに地殻の岩石を構成する代表的な鉱物の一つであり,火山岩,斑レイ岩やセン緑岩などの深成岩,および変成岩にふつうに含まれる。角セン岩や角セン石斑レイ岩などの岩石にはとくに多量に含まれる。カンラン岩などの超塩基性岩にも含まれている。
(3)にはランセン石,リーベックセン石riebeckite,アルベゾンセン石arfvedsonite,カトフォルセン石katophorite,リヒテルセン石richteriteが含まれる。リヒテルセン石は(2)に属する透セン石Ca2Mg5Si8O22(OH)2のCaを二つのNaで置き換えたものである。アルカリ角セン石は藍青色(ランセン石),濃赤色(カトフォルセン石)などのように特徴的な色調をもつものが多い。またその出現する岩石も限られている。たとえば,ランセン石は高圧型の広域変成岩に特徴的に見られ,カトフォルセン石やアルベゾンセン石の一部はアルカリ火山岩やアルカリ深成岩にみられる。
角セン石には斜方晶系と単斜晶系に属するものがある。斜方晶系の角セン石はLiイオンを多く含むホルムクウィストセン石holmquisiteを除くと直セン石のみである。単斜晶系の角セン石は共通して{110}のへき開面を多数もっている。このへき開面の交わる角度は56~58度でほぼ一定である。交角は肉眼的によく似た輝石では約88度であるので角セン石と輝石を区別する重要な規準である。比重は3.0~3.5,モース硬度は5~6である。
執筆者:鳥海 光弘
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報