社会保険庁改革(読み)しゃかいほけんちょうかいかく

知恵蔵 「社会保険庁改革」の解説

社会保険庁改革

公的年金制度改革政治の重要問題とされるなかで、社会保険庁の在り方をめぐる議論が、ここ3年余にわたって続いてきた。2007年の通常国会で成立した社会保険庁改革関連法は、厚生労働省外局である社会保険庁を廃止するとした。そして、公的年金の財政責任・運営責任は厚生労働省本省が担い、保険医療機関の指導監督は地方厚生局が、また悪質な滞納者からの強制徴収国税庁へ委託するとされた。そのうえで、廃止される社会保険庁に代わって、公的年金の運営業務(適用、徴収、記録管理、相談、裁定、給付決定)は、公法人である日本年金機構に、また政府管掌健康保険事業については、公法人である全国健康保険協会に担わせることになった。日本年金機構は10年1月に設立される。職員は非公務員とし本部・地方ブロック本部・年金事務所(312カ所)体制がとられる。全国健康保険協会は08年10月に設立される。職員は非公務員であり、都道府県ごとに支部が設けられる。ただし、政府管掌健康保険の保険料の徴収は日本年金機構が担う。社会保険庁職員はこの2つの新設機関のいずれかに移るが、社会保険庁の問題とされてきた厚生労働省本省の監督責任、職員のモラール(士気)とモラル(職業倫理)などが高まるかどうか注目される。

(新藤宗幸 千葉大学法経学部教授 / 2008年)


社会保険庁改革

政府は2006年3月、社会保険庁の組織を見直すための社会保険庁改革法案を国会に提出した。年金保険料の無駄使いや支給ミスなど一連の不祥事に対するもので、主な柱は、(1)08年10月から社会保険庁を年金部門と政府管掌健康保険部門に分離する、(2)年金部門は「ねんきん事業機構」とし、厚生労働省の外局から国の「特別の機関」とする、(3)予算や人事など重要事項は外部の専門家で構成する年金運営会議を経ることとし、地方組織はブロック単位に集約する、(4)悪質な未納者は国民健康保険の有効期限を短縮したり、未納を続ける保険医療機関や社会保険労務士などは指定や資格の更新を認めない、などだ。政管健保は国と切り離した公法人を保険者として設立し、財政運営は都道府県単位にする。国会で審議が進められていた最中の06年5月、社保庁の地方事務所で国民年金保険料の納付率を上げるため、本人に無断で免除する不祥事が発覚。地方幹部が処分されるとともに、法案の通常国会の採決は見送られ継続審議となった。社会保険庁を巡っては04年の年金改正の際に、年金資金の無駄遣いや資材調達に絡む不祥事、不親切なサービスなどが問題となり、民間から新長官が登用され改革に取り組んできた。

(梶本章 朝日新聞記者 / 2007年)


社会保険庁改革

年金記録のずさんな管理・運営や不祥事が相次いだ社会保険庁を解体し、新しい組織にすること。政府は2007年3月、10年1月をめどに社会保険庁を廃止・解体し、年金部門を非公務員型の公法人「日本年金機構」に移す改革法案を決め、国会に提出した。国会審議は「宙に浮いた年金記録」の問題が紛糾したが、07年6月に成立した。社保庁解体案の骨子は(1)年金の運営全体は厚生労働省が責任を持つ(2)保険料の徴収や年金の支給、記録管理、年金相談などの実務は新しい機構が担当する(3)その中で、できるだけ多くの業務を民間に委託する(4)内閣に設けられた年金業務・組織再生会議が新機構の業務と民間委託の範囲を決め、社保庁から新機構へ移る職員の採用基準を作る(5)社保庁が行っていた政府管掌健康保険の業務は公法人の全国健康保険協会が引き継ぐ、などだ。政府は06年3月に社保庁の年金部門を国の特別の機関である「ねんきん機構」とする改革案を国会に提出したが、与党は抜本的な見直しが必要だとして廃案にした。また、民主党は対案として社保庁を国税庁と統合して歳入庁とする改革案を示した。

(梶本章 朝日新聞記者 / 2008年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

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