最新 心理学事典 「社会現象研究」の解説
しゃかいげんしょうけんきゅう
社会現象研究
psychological study of social phenomena
社会現象あるいは社会心理は,心理学の中では主として社会心理学が研究対象とすることが多い。この場合,あまり組織化されていない人びとの集合体における相互作用が問題とされるために集合行動collective behaviorとよばれ,個別の現象にかかわる要因だけでなく,その基底にある心理的メカニズムが検討される。たとえば,集合行動の一つである流言rumorは「真実かどうか証明されないままに,対面コミュニケーションを通して流れ,多くの人びとに信じられている命題」と定義されるが,その流布の程度は,当事者にとっての問題の重要性と,その内容に関する証拠の曖昧さの積に比例すると理解される(Allport,G.W.,& Postman,L.,1947)。
一方,解決すべき社会問題としては,犯罪・非行,いじめ,児童虐待,DV,引きこもり,自殺,喫煙,飲酒,瘦身・ダイエット,不法ドラッグ,カルト,インターネットやTVゲームにかかわる問題などが挙げられる。日本特有の問題としては,いわゆる「血液型性格判断」が挙げられる。単なるブームから,偏見や差別を助長する社会問題となるに至って,社会心理学者がその科学的証拠(の欠如)や人びとが信じる原因について多くの研究を実施し,提言を行なった。一般に,社会問題の解決に向けた研究や実践は,問題に応じて心理学など関連するさまざまな学問領域で実施される。アメリカの場合,1937年に社会問題に関する心理学的研究学会Society for the Psychological Study of Social Issues(SPSSI)が設立され,1945年にアメリカ心理学会(APA)のディビジョンの一つとなり現在に至っている。この学会の使命は,社会問題の解決に向けてその心理学的側面に関する科学的研究を実施すること,当該の問題に関する知見を一般の人びとの理解が容易になるように統合・要約すること,政策立案者に必要なデータを提供することとされており,『社会問題雑誌Journal of Social Issues』を発行するなど活発な活動を続けている。 →社会心理学 →集合行動 →犯罪
〔安藤 清志〕
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